《お多福美人講座》髪と匂いのTPO

コラム

 元祖グラビアアイドルとして名を馳せた新橋芸者「洗い髪のお妻」をご存知でしょうか。今のアイドル総選挙のようなことが、大正時代にはすでに行われておりました。浅草で行われた美人コンテストのための写真撮影のときのこと。百美人に選ばれていたお妻は頼んでいた髪結いが待てど暮らせど来ないので、洗い髪のまま人力車に飛び乗って現場に駆けつけたのです。当時、髪を結わずに洗い髪のまま人前に出ることは恥ずべきことだったのですが、その奔放さや機転の利かせ方が話題となって人気爆発。洗髪料のパッケージになったり、写真や絵葉書のモチーフになったそうです。豊かな美しい髪は、いつの時代も人の心を惹きつけますね。ところがその髪が、まるで逆に、引かれてしまう原因になることも大いにあり得ます。

 昔の女性が髪をきちんと結い上げていたのは、不衛生にならないように、周りの方に不快な思いをさせないようにという配慮も含まれていたのですが、今はどちらかといえばファッションや見た目重視。好きな彼の前で髪型が気になって、頻繁に髪をさわったり、揺らしたりすることがあると思うのです。それが二人だけの場所なら何も問題はありません。ところがお寿司屋さんのカウンターなどでは、隣の人に髪が当たったり、シャンプーの匂いや髪についたホコリが立ちのぼってしまって、悪気はなくても周りの方の美味しい食事を台無しにしてしまうことがあります。香水も、繊細な味や香りを楽しむ和食のお店では避けたいもの。注意をしてくれるお店もありますが、今の時代はなかなか教えてもらえる機会はありません。周りの方も、迷惑に感じていても、 そのことを伝えるのはためらわれますよね。はっきりわかるドレスコードと違い、髪や香りに関してのTPOと振る舞いは、自分で気をつけて、麗(うるわ)しく芳(かぐわ)しくいきたいものです。


ちより

エッセイスト。元新橋芸者。著書に『捨てれば入る福ふく掃除』『福ふく恋の兵法』など。男女の違いを楽しく伝える講演が人気で全国を回る日々。睡眠中、歌をうたったり手拍子をしたりと奇妙な行動をしがち


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