illustration: Yu Fukagawa

《お多福美人講座》結婚する人生・しない人生

コラム

 新橋の"売れっ妓(こ)芸者"だった千代里が、美人への道をご案内。
今日も一日、ささやかな心がけが美をつくり、福を招きます。

 「生まれてこのかた、自分で自分の髪を洗ったことがない」という"大きい"(年配の)お姉さんが、新橋には何人かいらっしゃいました。基本的に芸者は毎日、髪結いさんに行くので、その時にシャンプーをしてもらうのです。また、「一度も財布を持ったことがない」という女将さんもおられました。銀座で生まれ育ったその方は、近所のお店で、「これ、お願いね」というだけで、品物が家に届いたそうです。いわゆるツケ払いですね。世間一般の基準とは大きく違う世界で生きる女性は、結婚についてもまた、それぞれのものさしがありました。

 新橋芸者は、「結婚したら除名」という不文律があるので、人妻は存在しません。定年はなく、私が存じ上げている最高齢は96歳。一度は花嫁になった方、結婚せずにお子さんだけおられるお姉さんはいましたし、「新橋芸者としての一等出世は立派な方の奥様になること」の言葉通り、政財界や、才能ある方の元へ嫁いで、芸者をやめたお姉さんも多くいる一方で、お妾さんになり、引退したお姉さんもいました。

 家事・料理上手が価値ある女性のように言われると、私の場合、必死で"できます"アピールをしますが、「家事も料理もできなくていい。君がいることが何より大事」と請われて嫁いで、幸せに暮らしている方もいます。「結婚しないと不幸せ」と思い、本来の自分とはズンズンかけ離れていっても、とにかく好きな人の好みになろうとした若い頃。奥様だけでなく、お妾でも幸せな方、80歳を超えても現役でご贔屓に囲まれるお姉さんを見ると、人によって幸せは違うということを知りました。結婚のためだけに自分を偽っても幸せにはなれません。自分をよく知る。一人でも楽しい。逃げとして結婚を選ばない。そんな気持ちでいれば、世間の目を怖がらず、結婚してもしなくても幸せに生きられるようです。



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