illustration: Yu Fukagawa

《お多福美人講座》伝統芸能の入り口


 「日本の伝統芸能って難しそうだし、いろいろあってよくわからない」

 そんなときの入り口に、私は落語をおすすめしています。とはいえ、本来は娯楽である落語も、ハードルが高く感じてしまいがち。私も学生時代に「勉強しよう」とあらすじ本を買ってそれっきりでした。落語はやっぱり聴いてこそ。入門に本は不向きなようです。

 落語には、馴染みのない言葉や風俗、今は通用しない社会通念も盛り込まれていますが、それを現代の私たちにも通じるように説明を入れたり、理解できる話の運びにしてあるのが、おすすめの理由。

 また、花柳界・役者・長屋・大名・商家⋮登場する世界や人物も多岐にわたります。芝居噺などでは、歌舞伎や人形浄瑠璃のセリフがそのまま入っていたり、能・狂言・長唄・清元(きよもと)・常磐津(ときわず)・小唄・端唄(はうた)など、いろんな伝統芸能を垣間見ることができるのです。噺を聴くうち、それぞれの違いがわかってきたり、知識が蓄積されて、素地ができてきます。その中に特に心惹かれるものがでてくるかもしれません。

 今はネットなどでも手軽に落語を聴くことができるので、まずは興味を引く演目のものを一つ聴いてみて、面白くなければ、無理せずに次へ。「わからないけど我慢して聴こう」という気持ちでは後が続きません。江戸前・上方・古典・新作、笑えるものだけでなく、人情噺などの泣けるものまで、とたくさんの種類があるので、その中に「これは面白い!」と感じる噺家さんや演目がきっとあるはずです。耳だけでも楽しめるので、私は、家事やストレッチをしながら聴いています。

 狂言に「附子(ぶす)」というのがありますが、附子とはトリカブトのこと。口にすると無表情になることから、表情のない顔をブスと呼ぶようになったとか。これも落語で知ったことですが、落語を日常に取り入れて、ブスとは縁遠い毎日を送りたいものです。metro1811_art_inner.jpg





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