text:千代里 illustration: Yu Fukagawa

励ましの力《お多福美人講座》


 どうしてこんな目に遭うの!と思うこと、生きていればありますよね。芸者時代には、戦争や敗戦、バブル崩壊を経験された方にお話を伺う機会が多くありました。

 「辛いときにねぇ、がんばりなさいよって声をかけてもらってね。もう一度生きようと思えた」そんなお話を伺うこともありました。時代や意識の違いもあって、最近は「がんばって」という言葉はタブー視されることが多いようですが、かつて私がお会いした方は、「あなたのことを気にかけていますよ」「あなたなら大丈夫」「お互い乗り越えていこうね」といった気持ちを感じて励まされたのだと思います。

 世の中全体が揺れているようなときには、自分以外の周りの人もまた、辛く切ない体験をしているのに、そのことを忘れがち。でも、目先のことや自分のことしか考えられなくなって、弱い立場の人を置き去りにしたり、攻撃したりということが増えていくときこそ、優しい気持ちがどんなに人を救うかしれません。励ましや寄り添いには現実を変える力はないように思えますが、気にかけてくれる人の存在のおかげで力がわいて、困難を乗り越えられるということ、ありますよね。お金も労力もかからない優しい一言が人を支え、その言葉をかけられた人はまた他の人にその優しさを渡していく、という循環も生まれます。

 また、「励ます言葉をかけながら、本当は自分が励まされていた」「人を助けたいと思ったおかげで困難を乗り越える力が出た。本当は助けられていた」というお話もよく伺いました。

 困ったとき、辛いときこそ、自分のことだけではなく周りのことにも想いを馳せる。励ましの言葉、寄り添う言葉をかける。してもらうばかりではなく、自分になにができるか考えるなど。非常時といわれた時代を乗り越えて、その後を幸せに生きておられる方の心がけを、私も見習いたいと思います。

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