以前、花柳界には80歳を過ぎてもお稽古を続けるお姉さんがたくさんいらっしゃることを書きました。みんなの前で、自分よりうんと年下のお師匠さんに手厳しく叱られることがあろうとも、芸の精進を続けるお姉さんのことを、「すごいな。でも私には無理」と思いながら見ていました。私の頭の中には「できるようになったら◯。でも、達成できるまでの自分は×」という考えがあったからだと思います。
ところがあるとき、踊りの名手としてみんなから尊敬されていたお姉さん(当時すでに80歳を超えていらっしゃいました)が、「今日お洗濯をしてみたのよ。洗濯機の使い方を覚えたの」とか、「お料理つくってみたの。案外難しいわね」と楽しそうにおっしゃるのを聞いたのです。長年いてくれたお手伝いさんが高齢でやめたのを機に、それまで一度もしたことがなかった家事にチャレンジしているということでした。
同年代の主婦と比べたら、そのときのお姉さんは遅咲きもいいところ。「いまさら恥ずかしくてできない」と挑戦しない選択もあったはずです。ところがそのお姉さんは、洗濯も料理もできない自分に×をつけるのではなく、「いまの自分に何ができて何ができないかを把握して、自分のペースで挑戦する。できるようになったことも、まだできないことも含めて楽しむ」という道を選んだのです。ほかの人がとっくに知っていようとも、それは自分の成長とは関係ない。自分がそれを知り、それによってどう変化するのかが大事。そんなお姉さんを見て、「学ぶ」とは知識を得ることだけを指すのではなく、知識に触れたときに生じる自分の内側や外側の変化、心や体の反応を観察することも含むのだと気づいたのです。
結果にフォーカスするのではなく、「変化を楽しむ」という気持ちで、これからも学び続けたいなと思います。
