いよいよ今週はクリスマスウイーク。プレゼントは、食事はとさまざまなプランを立てて心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。
クリスマスといえば洋菓子やケーキがつきものですが、最近では和菓子の世界でもクリスマスを意識した商品がどんどん開発されています。そこで、新宿高島屋で和菓子バイヤーを務める山本友里さんにお薦めの和菓子を選んでもらいました。
入社6年目、最年少で店舗担当の和菓子バイヤーに就任して3年目の山本さんは、ちょうど〝メトロポリターナ世代〟。「若いお客さまにも和菓子を選ぶ楽しさや日本の四季を表現する和菓子の素晴らしさを知っていただきたい」と、バイヤーの仕事をしているそうです。
まず、和菓子と聞いて思い浮かぶのは日本の四季折々の表情を反映した美しい生菓子ですよね。山本さんが「クリスマスをモチーフにした生菓子を」と注文してでき上がったのがこの3つです。

サンタクロース、トナカイ、そしてツリーのクリスマスの3大テーマを生菓子で表現しました
「サンタクロース」は「引網香月堂」(富山県高岡市)四代目、引網康博さんが、「真っ赤なお鼻」は「しろ平老舗」(滋賀県愛荘町)五代目の岩佐昇さんが、「聖夜」は「巌邑堂」(浜松市)五代目の内田弘守さんがそれぞれ制作しました(いずれも324円・税込み)。彼らは「若き匠たちの挑戦」(通称ワカタク)という新進気鋭の和菓子職人グループのメンバーです。
引網さんは、「とにかく和菓子にあまり興味のない方に、手に取っていただけるように、かわいい図案を目指しました」と話します。中の餡に富山で発酵させている紅茶の葉を入れて、香りを出しています。「スパークリングなどの発泡系の飲み物と合わせると香りが立ってよい感じです」とお薦めの食べ方を紹介してくれました。

「引網香月堂」の引網康博さんの「サンタクロース」。引網さんの作品は、いつもかわいらしい意匠が特徴です
岩佐さんは、モチーフのトナカイを上用饅頭(じょうようまんじゅう)で作りました。菓名は「真っ赤なお鼻」です。若い女性にも取っつきやすく、興味を持ってもらえるようにとトナカイにしたそうです。
ヤマイモをすりおろして、砂糖と上用粉を加えた生地であんを包みますが、そのときに粉の1割5分を「はったい粉」と呼ばれる、小麦をあぶってひいた粉にすると、自然な黄色が出るそうです。さらに、香ばしくなり食欲もそそります。ここにも、着色料などを使わずに天然素材にこだわる菓子作りの姿勢が現れています。ちなみに赤い花は羊羹、角は焼きごてで付けました。

「しろ平老舗」の岩佐昇さんの作品「真っ赤なお鼻」。ワンポイントがきいています
内田さんは、直線よりも優しく、おいしく感じる曲線を折りたたんだデザインの生菓子を作ろうと考え、外郎で作りました。実はクリスマスをテーマに生菓子を作るのは初めてといいます。
背景には今年7月、東京・茗荷谷の名店「一幸庵」で再修行をした経験があります。駆け出しのころように洗い物やアン玉切りなどを初心に戻って行い、店主、水上力さんの和菓子作りに対する姿勢や考えを間近で感じました。「水上さんの斬新さに感銘を受け、和菓子屋に凝り固まっていた自分に気付いた」といいます。そして完成させたクリスマスの上生菓子です。

「巌邑堂」の内田弘守さんが作った初めてのクリスマスの上生菓子「聖夜」。和菓子の巨匠を間近に見て「自分には和菓子屋という枠があった」と話します
次にご紹介するのは棹菓子(さおがし)、つまり羊羹です。山形市の老舗「乃し梅本舗 佐藤屋」の八代目、佐藤慎太郎さんが「和菓子だってクリスマスを楽しんでみてもいいんじゃない」という発想で作りました。
菓名は「賢者のおくりもの」(1296円・税込み)。クリスマスにふさわしいOヘンリーの短編小説を題材にしています。
貧しい夫妻が、それぞれ相手が最も喜ぶクリスマスプレゼントを買うお金を工面します。妻は夫が大切にしている金の懐中時計をつるす鎖を買うために、自慢の髪を切り落として売り、夫は妻が欲しがっていた鼈甲のくしを買うために、自慢の懐中時計を質に入れてしまうというストーリーです。一見愚かな行き違いと思われる行為ですが、最も懸命な贈り物だったと結論づけます。それは2人はお互いの欲しい物、必要な物、好きな物を、正しく理解し合っていたからです。
佐藤さんは「昨今、私が好きだからとか、私のお薦めなのでなどと〝私〟を前面に出した贈り物が多いようですが、相手側のことを考えて贈り物をしようという気持ちを込めました」と話します。
イチゴのリキュールだけだとイチゴジャムのようになってしまうので、イチゴとココナツのリキュールを入れて、山形のハチミツの寒天を重ねて、クリスマスの明かりのともる部屋を表現したそうです。羊羹とは思えず、ケーキの上にのっていても違和感がなさそうですが、ほのかにイチゴが香る羊羹です。和菓子と酒のマリアージュを進める佐藤さんは「カクテルを作っているときに思いつきました」といいます。女子にプレゼントするならという発想からできました。

「乃し梅本舗 佐藤屋」の佐藤慎太郎さんが作った「賢者のおくりもの」はまったく羊羹とは思えないふしぎなお菓子です
次にパッケージがクリスマス仕様の和菓子をご紹介します。
おかきの専門店「赤坂柿山」(東京都港区)の「メリークリスマス」(1080円・税込み)は別売りの風呂敷(1080円・税込み)とコンビにするとお土産にも最適です。中身は、見た目にもキュートな食べきりサイズのパック詰めあられ。ギフトボックスもカラフルで、とてもあられが入っているとは思えません。
チョコレートコーティングしたハート形のおかきと、通常のしょうゆベースのおかきなどが入っています。甘い物の後にはからい物。ケーキの後のひとときにぴったりですね。

「赤坂柿山」の「メリークリスマス」は甘いケーキの後にピッタリです

真っ赤なポインセチアの花ポーチに入っているのは、「銀座菊廼舎」(ぎんざきくのや・東京都中央区)の「冨貴寄(ふきよせ) 聖夜」(1080円・税込み)です。古来より茶事に欠かせないお菓子として親しまれている「吹きよせ」を現代風にアレンジしました。山本さんは「とにかくパッケージがかわいくて女子好み。雪の結晶の雲平が入っているのもクリスマスらしくていいですね」と話します。

「銀座菊廼舎」の真っ赤なポインセチアの花ポーチは売り場でかなり目をひきます
最後に真っ赤な風呂敷に包まれたのは「KOGANEAN」の「クリスマス詰合せ」(税込2700円・税込み)。どら(どら焼き)4個と食べやすい正方形に切り出した煉り羊羹「こいねり」の詰め合わせです。こいねりは、イチゴ、ピーナツバター、抹茶、ずんだなど8通りの味が楽しめます。
「食べた瞬間、『何、この皮は?』と衝撃を受けました」と話すどらは、山本さんの一押しの和菓子。生地の中に餅粉を合わせてもっちりと仕上げています。KOGANEANは、新宿高島屋だけに出店しているため、ここでしか手に入りません。

「KOGANEAN」の「クリスマス詰合せ」はおみやげに最適です
クリスマスは洋菓子でないといけないなどというルールはありません。和菓子を自由に楽しんでクリスマスを盛り上げましょう。 (写真はすべて田中幸美)
◆お菓子は25日(日)までの期間限定で発売しています。いずれも売り切れる場合があります。