普段は観光的な拝観をいっさい受け付けていない京都・建仁寺の塔頭「正伝永源院」(しょうでんえいげんいん・京都市東山区)を舞台にこのほど、俳優でクリエイターの井浦新さんが代表理事を務める「匠文化機構」の主催で、クラシックのバイオリンコンサートが行われました。バイオリニストの高雄敦子さんが史上最高の弦楽器とされるストラディバリウスを手にソロ演奏を披露。集まった人たちは、いずれも約400年以上も前に作られた寺と名器の一夜限りの邂逅に魅了されていました。

バイオリニストの高雄敦子さんが名器とされるストラディバリウスを手にソロ演奏を披露しました=京都市東山区の正伝永源院 (写真・田中幸美)
高雄さんは、名残の紅葉がライトアップによって照らし出された庭を背景に、ドビュッシーの「月の光」や歌手・平原綾香のデビュー曲として有名になった「ジュピター」など計4曲を演奏。バイオリンとチェロの音域が合わさったようなストラディバリウスの音色が庭に溶け込んで幻想的な雰囲気を醸し出していました。熱心なアンコールに促された高雄さんが、TBS系列局の人気ドキュメンタリー「情熱大陸」のオープニングテーマを披露すると、盛んな拍手が送られました。

幻想的にライトアップされた正伝永源院の庭
高雄さんは、京都市立京都堀川音楽高校を卒業後、英国王立音楽院に留学し2012年同学院の修士課程を卒業。その後、日本での本格的な演奏活動を開始しました。昨年は京都・大原の勝林院や東山の高台寺などで演奏するなど、「音楽と日本文化」をテーマにしたコンサート活動を行っています。

日本文化と音楽をテーマにしたコンサート活動を行うバイオリニストの高雄敦子さん。和と洋がうまくコラボされたすてきな衣装で演奏しました
この日招かれたのは、匠文化機構の賛同者や高雄さんの後援者など約30人。あいにく井浦さんは参加しませんでした。
コンサートに先立ち、細川護煕元首相によって描かれ、奉納された襖絵の部屋でお茶をいただき、さらに副住職の真神啓仁さんから寺の由緒や歴史などの法話を拝聴しました。

細川護煕元首相の筆による襖絵「秋氣」

細川護煕元首相の筆による襖絵「聴雪」
正伝永源院は、鎌倉年間に建立された正伝院と南北朝時代の14世紀半ばに創建された永源庵の2つの寺が、明治の廃仏毀釈政策を機に統合されてできたそうです。織田信長の実弟で大名茶人としても名高い織田有楽斎(うらくさい)と熊本藩主・細川家のぼだい寺となっています。庭の片隅には、有楽斎が建てた国宝の茶室「如庵」(じょあん)が復元されており、暦張りや「有楽窓」などの有楽斎好みの特徴を見ることができます。

狩野山楽の襖絵の部屋で法話を披露する真神啓仁副住職

掲げられた額について説明する真神啓仁副住職

NHK大河ドラマ「真田丸」では、豊臣秀頼の補佐役として大阪城にいて東西両軍の和平に奔走する有楽斎があたかも徳川の間者として少々姑息に描かれていました。これについて有楽斎研究をしている真神さんは、「あれはかなり脚色されています。本来はもっと人なつこい人間でした」と話していました。

織田有楽斎の掛け軸が飾られた部屋
またこの日、本堂には、普段は決して見ることのできない狩野山楽の障壁画が飾られ、参加者たちは400年前の傑作に見入っていました。
真神さんは、「寺にクラシック音楽は似合いますね。またこのようなイベントができたらいいと思います」と話していました。高雄さんも「私は京都人なのですが、なかなか正伝永源院さんは入れなくて今回初めて参拝させていただきました。特別なイベントで演奏できたことを大変うれしく思っております」と話していました。

正伝永源院の庭


正伝永源院は春と秋の年2回公開されます
(写真はすべて田中幸美)
正伝永源院は通常は非公開ですが、春のキリシマツツジと秋の紅葉の年に2回だけ期間を限定して公開しています。
正伝永源院の公式ホームページは、http://www.shoden-eigenin.com/