「その方、名を何と申す?
どこから参った?
この木曽には何用で参ったか?」
昔、関所ではこんなやり取りが交わされていたのでしょうか。長野県木曽町の「福島関所跡」では江戸時代の関所通行を体験するプログラムがあります。

復元された福島関所の門
信州・上田を舞台にしたNHK大河ドラマ「真田丸」後の新たな観光の目玉として長野県は〝テーマ別ツーリズム〟を掲げていますが、その中の1つ「文化・歴史」を訪ねる旅が体験できるのが、福島関所跡です。
関所といえば箱根(神奈川県箱根町)が有名ですが、木曽福島は、東海道の箱根や新居(静岡県湖西市)、中山道の碓氷峠(群馬県安中市)とともに四大関所に数えられていました。東西45メートル、南北30メートルの堂々たる関所は、1869(明治2)年の関所廃止後に取り壊されましたが、1975年の発掘調査をもとに東西の門も復元され、史跡公園として整備されています。

復元された福島関所の門

福島関所跡では、毛筆で和紙に手書きした自分用の「通行手形」を役人に渡して吟味してもらう「関所体験」ができます。その際に冒頭のような問答がされるというわけです。さすがに「入国拒否」を言い渡される人はいないようですが、楽しい受け答えで、上級役人と談笑するシーンなども見られました。関所跡には、文書や武具などが展示されてあったり、パネルには関所にまつわるQ&Aなどがいろいろ書かれていてとても勉強になります。実際役人が座る上番所には実際座って写真も撮ることができます。箱根関所の大きさに比べれば狭いですが、建物は当時を忠実に再現していて雰囲気があります。

福島関所跡では、毛筆で和紙に手書きした自分用の「通行手形」を用意します
福島関所は、木曽路の11宿のうち松本から5番目にあたる「福島宿」の北の端にあり、江戸と京都を結ぶ中山道のちょうど中間点にあたります。かつて江戸時代の旅人は木曽川に沿って曲がりくねって伸びる道を進みました。中山道は木曽川の断崖にあるため、逃げ場がなく関所の立地としてはうってつけだったのです。確かに下を流れる木曽川と街並みの眺望は抜群です。

木曽川の断崖にあるため、眺望は抜群です
その福島関所を守っていたのが木曽谷の徳川直轄地支配を任された木曽代官の山村家です。とくに、森林保護政策により山での木の伐採を制限された木曽の領民に、地場産品の生産を奨励したのが、木曽代官4代目の山村良豊です。関所の近くには山村代官の暮らした「山村代官屋敷」があり、下屋敷の一部と庭園は当時のものが残っています。山村家は、代々約280年間、この木曽谷の代官を務めました。

山村代官屋敷


福島関所近くの街並み

福島関所近くの木曽川にかかる橋
南北に長く全国で4番目に広い面積の長野県は、歴史と文化のほか、雄大な自然や、日本一の長寿県としても注目される健康など魅力的な観光資源にあふれています。NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)が2011年から行っている移住希望地域の調査では、2014年に山梨県にトップの座を奪われたものの、3年連続4回の1位に輝いています。
「真田丸」は終ってしまいましたが、長野県はあなたの知らない魅力と可能性にあふれています。来年はゆっくり長野を旅してみませんか。
(写真はすべて田中幸美)