シャッタースピードを落として人物を浮き立たせる
前回に続き、人物写真(ポートレート)を学びます。今回も俳優の津田幹土(つだかんと)さんをモデルに、自然な表情を引き出した前回から一歩進んで、ポーズを付けるなどひと味違う撮り方に挑戦しました。
しょうめい先生からのお題「デートっぽく」という役得を満喫しつつ、東京駅周辺を散策。相合い傘に入っているような親密な雰囲気のカットを撮って悦に入っていると、背景に駅舎が入る人気スポットに到着しました。
どう撮るべきか悩み、「ジャンプしてもらえますか?」と苦し紛れにお願い。普通は恥じらいが出てしまうところ、さすが舞台で経験を積んでいる津田さん、こちらの意図を瞬時に汲(く)んで120%の力で応えてくれました。江ノ電の撮影で学んだ連写の技術も使い、”動き”のある1枚に仕上がりました。
「構図をやや斜めにすると、さらに動きを付けられる。人物を中心からずらし、背景の”抜け”た感じを見せるなど工夫してみても面白いね」と先生。作品を拝見すると、津田さんが大きく伸びをしている爽やかな姿が。それ、わたしも撮りたかった!
いざというときにどんなポーズを撮りたいのか、頭の中にイメージをストックしておくことが大切ですね。もう一度、いままでの”推し”アイドルの写真を見返し、お気に入りのポーズや表情をチェックしておこうと。
次は、東京駅丸の内北口改札前へ。天窓から降り注ぐ光が、スポットライトみたい…
舞台に立つようにたたずむ津田さんのポーズはさすが。「映像作品は編集の仕方で、演じる役の感情などをある程度表現できます。でも、舞台は自らの演技ですべてを伝えるので、そこが難しいところであり、面白いところでもあります」と津田さん。なるほど、その経験があるから立ち姿に雰囲気があるんですね。
ただ、撮影し始めると、人通りの多い場所だけに津田さんを際立たせるのが難しい。そこで先生から「シャッタースピードを落として歩行者や背景が流れる(ぶれる)ように写してごらん。都会的な雰囲気を残しつつ、(立ち止まっている)津田さんが浮き上がってみえるはずだよ」とアドバイスが。
シャッタースピードを15分の1秒とかなり遅くしてみると、冒頭の雑誌のような写真に。一眼レフカメラで、こういう写真が撮ってみたかったんです!
先生はよりベストな設定値に加え、構図や光などのあらゆる条件に考えを巡らしてあり、お見事の一言でした。マニュアル撮影には慣れてきましたが、やはり場面に応じた設定値を頭に叩き込むのが次のステップですね。これからも”推し”アイドルの撮影を目指し、日々精進です!
つだ かんと 1991年9月26日生まれ。TEAM NACS 第16回公演『PARAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて』、京極夏彦原作の『魍魎の匣』など舞台を中心に活躍。出演情報はツイッター(@kanty1147)で随時更新。
※カメラ女子への激励や、しょうめい先生に教えてほしいことなどご意見・ご感想を募集します。編集部(question@metropolitana.jp)までどしどしお送りください!
しょうめい先生 新聞社で報道写真を撮り続けて40年以上のベテランカメラマン。ライフワークとして鎌倉の景色を撮り続けるほか、某大学芸術学部の写真学科で講師も務める。鎌倉ドローン協会の理事の肩書きを持ち、最新の撮影グッズにも精通している。
Illustration:Nozomi Yuasa
※第1、第3週の水曜掲載。