”記念写真”にならないよう、話しながら、動きを付けながら
メトロポリターナ編集部員の立場を利用(公私混同?)し、いつか”推し”のアイドルを撮影することを目指して写真を学んでいる、この連載。今回は、ついに人物写真(ポートレート)に挑戦です。アイドル撮影に近づく、大きな一歩となりそう!と、いつもよりテンションも上がり気味に。モデルとして、舞台を中心に活躍する俳優の津田幹土(つだ かんと)さんにご登場頂き、早速撮影スタートです。
まずは、しょうめい先生から「デートっぽく、モデルさんの魅力を思いっきりアピールできるように撮ってみよう」とお題が。”デート”という願ってもない指示を忠実に守り、丸の内で津田さんと待ち合わせ。さすが俳優さん、何気ないたたずまいも画になります。
撮影日はあいにくの小雨でしたが、光量は十分。まずは、開幕間近のラグビーW杯に合わせ、競技を愛する全ての人々の幸せを祈願するために設置された「丸の内ラグビー神社」へ。
先生が「自由に撮ってみて」というので、オブジェの隣に座る姿や、絵馬をみている様子、お参りなど何パターンか撮影してみましたが、自然な感じを出すのは難しい…。
そこで先生と交代。わたしは普段のスナップのようにカメラを中腰になって無口で構えていましたが、先生はベンチで隣に座って話しかけながら撮影。なるほど、デートっぽい!
「隣に座って自然な状態で撮ると距離のみならず、関係の近さも表現でき、表情が引き出しやすくなるよ。顔だけではなく、肩や腕まで構図に入れれば、写真でも一緒に座っている感じが出るんだ」
なるほど、女子目線にもなれる先生のカメラマン魂は、さすがです。確かに津田さんの表情も心なしか朗らかな気がします。
神社でお参りしている写真も、私は津田さんの横や後ろから撮りましたが、先生は正面から。こうするとより自然な様子になります。
絵馬はカメラに突き出してもらい、ぼかすことで、ピントを合わせた津田さんがより際立ちされて、ポートレートならではの良さが出ています。
先生からは「人物を撮るときはみんなピースしたり、かしこまったりして『記念写真』っぽくなってしまうことが多いね。せっかくなら、いろいろな場所やシチュエーションに合わせて、(絵馬を突きだしてもらうなど)動きを付けてもらうと撮影相手の緊張もとけるし、撮り方のバリエーションが広がるよ」とアドバイスをもらいました。
続いて、一休みも兼ねてタピオカを飲みにカフェへ。津田さんから役者を目指したきっかけや、舞台の魅力などを伺いながら撮影しました。「中学時代に観(み)た舞台がきっかけで役者をやってみたいと思い、両親にも伝えていました。中学、高校はスポーツに打ち込んでいましたが、大学は演技専攻に進み、本格的に勉強を始めました」と津田さん。
大学時代の授業の思い出や、「いい人も、悪い人も演じられる名バイプレーヤー」という目指す役者像について話すうち、徐々に表情もリラックス。カフェが少し暗めで、設定に手間取りましたが、津田さんと一緒に過ごしているような1枚を撮ることができました。読者のみなさんにも、デート気分を味わってもらえたでしょうか。
次回は東京駅周辺で、一歩進んだポートレートの撮影を学びます!
つだ かんと 1991年9月26日生まれ。TEAM NACS 第16回公演『PARAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて』、京極夏彦原作の『魍魎の匣』など舞台を中心に活躍。出演情報はツイッター(@kanty1147)で随時更新。
※カメラ女子への激励や、しょうめい先生に教えてほしいことなどご意見・ご感想を募集します。編集部(question@metropolitana.jp)までどしどしお送りください!
しょうめい先生 新聞社で報道写真を撮り続けて40年以上のベテランカメラマン。ライフワークとして鎌倉の景色を撮り続けるほか、某大学芸術学部の写真学科で講師も務める。鎌倉ドローン協会の理事の肩書きを持ち、最新の撮影グッズにも精通している。
Illustration:Nozomi Yuasa
※今月から第1、3週の水曜掲載になりました。