「屏風にあそぶ 春のしつらえ」の目玉展示である「二条城行幸図屏風・右隻」 (江戸時代・17世紀 泉屋博古館蔵) 

​《六本木1丁目》桜の絵や屏風などで春を先取り 泉屋博古館で


 東京の桜の開花は3月23日前後という予想も出て、いっそう桜の待ち遠しいきょうこのごろですね。そこで、一足先に満開の桜を絵や屏風で楽しんでみませんか?
 東京・六本木の「泉屋博古館分館」(せんおくはくこかん)では、華やかな京の都を描いた「二条城行幸図屏風」をメーンに、春を彩る華やかな屏風の名品や茶道具などを集めた「屏風にあそぶ 春のしつらえ」が開催されています。

桜をモチーフにした屏風や茶道具などを展示している「屏風にあそぶ 春のしつらえ」=東京・六本木の「泉屋博古館」 (写真・田中幸美)


 泉屋博古館は、住友家第15代当主、住友吉左衛門友純(ともいと・春翠)が収集した中国青銅器をはじめ、書跡や絵画などの美術品(住友コレクション)を、京都・東山の住友本邸敷地の一角に保存展示する美術館です。分館は2002年、東京・六本木に開設しました。

桜をモチーフにした屏風や茶道具などを展示する「屏風にあそぶ 春のしつらえ」 (写真・田中幸美)


 桜の花を題材にした美術品の中でもひと際目立つのが「誰ヶ袖図屏風」(だかそでずびょうぶ)です。この屏風は、着ている人物は描かれず、さまざまな模様の小袖だけが描かれています。
 室町時代から今の着物の原型となる「小袖」が身分の高い人に着用されるようになり、江戸時代初期にかけて小袖だけが描かれた屏風がたくさん作られました。和歌の一節がもとになっているとか、遊女が室内に着物を飾って楽しんだなど諸説あるそうです。

着ている人物は描かれず、さまざまな模様の小袖だけが描かれた「誰ヶ袖図屏風」 =東京・六本木の泉屋博古館 (写真・田中幸美)


 桜にちなんだ茶入れ「丹波茶入」は、江戸時代の大名茶人で作庭家の小堀遠州が、桜の名所として有名な奈良・吉野山の景色に見えることから山桜と命名したそうです。茶入れを保存する容器「挽家」(ひきや)も一緒に展示しています。

 「丹波茶入 銘 山桜」 江戸時代・17世紀 泉屋博古館分館蔵


 菊池容斎の「桜図」も印象的です。菊池容斎は、幕末から明治にかけて活躍した画人です。もとは江戸城の警護役を勤める幕臣でしたが、38歳ころから本格的に絵の勉強をしたそうです。
 菊池容斎は1つの画流派にこだわらない人で、狩野派をはじめ円山四条派、大和絵などさまざまな筆法・描法を習得して融合するなど近代絵画の先がけ的な作風を作った人として評価されています。
 この桜図は、文献から上野寛永寺にあった桜ということがわかりました。最近の研究では描かれた2つの堂宇は寛永寺に関わるものであることもわかってきました。寛永寺の高僧にために描きましたが、御披露目に同席した公家が気に入り持ち帰ったという逸話があります。それ以来一度も表に出ていないので非常に状態がよいといいます。

菊池容斎 《桜図》 江戸時代・弘化4年(1847) 泉屋博古館分館蔵 (前期展示・2/25~3/26)


 また、今回の目玉となるのが「二条城行幸図屏風」。「寛永行幸図」ともいわれる六曲一双の屏風です。江戸時代寛永3(1626)年、三代将軍・徳川家光とその父秀忠の招きに応じ、後水尾天皇と中宮和子(まさこ)らの一行が京都二条城に行幸するという天皇と将軍の華麗なるパレードが描かれています。

「二条城行幸図屏風」は、六曲一双の屏風です (写真・田中幸美)


 この屏風には2つの特徴があると泉屋博古館の森下愛子学芸員は解説します。
 1つは、史実に忠実に描かれているということ。画面が上下二段に分かれ、下段では内裏へ天皇を迎えに参内する中立売通の将軍ら武家の一行を、上段では二条城へ向けて堀川通を進む天皇の一行が整然と粛々と進む様子が描かれています。また沿道は大勢の観衆で埋め尽くされ、この歴史的パレードに浮かれ騒ぐ民衆のエネルギーがみなぎっています。

「二条城行幸図屏風・左隻」江戸時代・17世紀 泉屋博古館蔵


 ちなみに2頭の牛が引く牛車にのっているのが中宮和子で、鳳凰(ほうおう)が飾られた輿が天皇のものというふうに、誰がどこにいるかわかるように描かれています。

「二条城行幸図屏風」の後水尾天皇の乗った輿


「二条城行幸図屏風」の中宮、和子の乗った牛車 江戸時代・17世紀 泉屋博古館蔵


 もう1つの特徴は、この屏風の保存状態が非常にいいということです。パッと見て、色が非常に鮮やかと思われるかもしれませんが、それもそのはず。江戸中期に住友家に入って以来展示するなどして人の目に触れることがあまりなかった、まさに〝お蔵入り〟していた屏風だそうです。
 あと1カ月もしたら本物の桜を楽しめる季節がやってきますが、それまでの間、桜の美術品で楽しむのも趣きがありますね。  


◆「泉屋博古館 分館」は東京都六本木1-5-1。午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜休館。問い合わせは☎03・5777・8600(ハローダイヤル)。「屏風にあそぶ 春のしつらえ」は5月7日まで開催。泉屋博古館の公式ホームページは、https://www.sen-oku.or.jp/



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