健全なワインは、酸化などの影響によるダメージのないものといえますが、その判断はなかなか難しいものがあります。
ワインは醸造からワイナリーでの保管、現地での流通、船舶輸送、国内保管などで何らかのダメージを受ける可能性があります。これはコーヒーも同じで、生豆にするまでの精製、乾燥、選別工程から梱包材、船舶輸送、国内保管などで何らかの影響を受ける可能性があります。
ソムリエは、顧客にワインの良さや食事との相性などを伝えますが、ワインの劣化のチェックも大きな仕事です。まずソムリエが風味をチェックし、問題がないと判断すれば顧客にテースティングしてもらいます。しかし、顧客はワインのプロではありませんし、初めてのワインであれば味がわかりませんので、「はい」とか「うなずく」しかありません。
しかし、この健全さの判断は、ソムリエによっても個人差があり、平気で劣化したものを出すソムリエもたまにみられます。20~30年前は限られたワイン以外はリーファーコンテナ(以下R、15℃前後に温度を一定にしたコンテナ)が使用されず、ドライコンテナ(以下D、夏場はコンテナ内の温度が上昇する)が使用されていましたので、劣化したワインも多く流通し、劣化の味がわからないソムリエも多くいました。

風味を理解する愛好家らが増え、劣化したワインは減っている
ワイン市場の30年の歴史は、その風味を理解するソムリエやワイン愛好家を増やしてきましたので、今では異質な味のワインが出てくることは少なくなりました。
また、その当時のレストランは、料理の売り上げよりもワインの売り上げのほうが多いこともあった時代でした。日本におけるワイン黎明期は、顧客はワインの適正価格がわからなかったので、そのようなことが見られましたが、今はネットで価格がわかりますので、あまり変な価格にすることはできなくなっています。
逆に言うと、レストランはボトル5000円で提供するワインでは利益がとりにくいということになりますので、料理+ワインでうまく売り上げをコントロールする必要に迫られています。
コーヒーの生豆も、収穫してから長くは保存できませんが、20年前はそのことをきちんと理解している人もあまりいませんでした。私も1990年の開業時から10年経験し、生豆に何か問題があると感じ、先行してRを使用していたワインの事例を研究しました。
その結果2000年に入り、生豆の輸送にRを使用しましたが、まだそのような事例はほとんどなく、「なんでそんなことをするの?」と理解されるまでは数年かかりました。
コンテナの手配が大変だったことを記憶しています。
今では、生豆の輸送に可能な限りRを使用し、定温倉庫(15℃に温度コントロール)に保管しています。

ワインとコーヒー豆は保管するコンテナの温度管理が重要になる
さて、最近のレストランは、飲み放題の店が増加しました。
フレンチやイタリアンでは、8000円程度以上のコース料理の場合、ワインも同程度かそれ以上となりますので、接待でなければ何度も行くことはできません。
2人の食事(8000円×2)+ワイン(最低で1万2000円程度)+サービス料+税で3万3000円程度、それに食前酒や水を注文すると一人2万円近くになってしまいます。
グラスワイン1~2杯では、せっかくの料理を十分楽しめませんので、奮発するしかありません。
料理+飲み放題5000円とか7000円とかの店では、ワインの質はそれなりのものということが予測されます。最近のチリなどの南米のワインは、オーストラリアやニュージーランドよりも安くありますし、スペインの発泡酒にも安いものがありますので、それ等でよければ価値があると思います。しかし、フランスのブルゴーニュやシャンパンが用意されることはあり得ませんのでワイン好きは初めからそれらの店は選択肢には入れないでしょう。もちろん、ワイン以外にビールその他のアルコールもありますが、やはり基本はワインになるでしょう。
1000円で販売されるワインと1万円のワインの間には生産、醸造プロセスや、テロワール(気象条件や土壌などの栽培環境)の違いがあり、風味に違いが生じます。
よい風味を理解できるようになれば、食事も楽しくなります。
だからといって、初めから高いワインを飲む必要はありませんので、少しずつ飲むワインの質を上げていけばよいと思います。
コーヒーの価格も、同じようにスペシャルティコーヒーとコマーシャルコーヒーとでは生豆価格が異なりますので、コーヒー豆の販売価格に反映されます。コーヒーの風味の良さを理解していただきたいと願うばかりです。
例えば、エチオピアのグレード4では未熟豆、発酵豆、虫食い豆などが多く含まれますが、そのまま輸出されます。したがって、日本入荷の大部分のエチオピアには、欠点豆が多く含まれ、それが焙煎されますので風味に大きなダメージが伴います。
しかし、グレード1は、完熟したチエリー(果実)を摘み、さらに女性たちが混ざりこんだ未熟豆をハンドピック(手選別)します。それでも果実の時にはわからない欠点豆は混ざっていますので、現地で乾燥、脱殻した生豆から欠点豆をハンドピックします。これでかなり欠点はなくなりますが、さらに、日本入荷後堀口珈琲では、生豆を電子選別機にかけ、欠点をはじき、焙煎後にハンドピックします。ここまで4回も選別していますので、世界でも類のないようなクリーンで豊かな風味のコーヒーが誕生します。

エチオピアのグレード4は未熟豆をハンドピックしている