16日の「和菓子の日」にちなんだ催事を20日(火)までの期間限定で、東京都世田谷区の玉川高島屋で行っている和菓子職人のユニット「ワカタク」(若き匠たちの挑戦)。
このユニットは、高島屋のカリスマ和菓子バイヤー、畑主税(ちから)さんが選び抜いた次代を担う30~40代の若主人9人で2014年に結成されました。畑さんは、全国約1000軒の和菓子店を回り、約8000点の和菓子を食べては買い付けるほか、和菓子の持つ歴史や季節感、おいしさなどを丁寧につづったブログ「和菓子魂」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/)で和菓子の裾野を広げようと活動しています。ブログは今や、数千人のフォロワーを数えるほどの人気ぶりです。

初日の催事を言えて、ワカタクのメンバーと笑顔で記念写真に収まる高島屋和菓子バイヤーの畑主税さん(後列左端)=東京都世田谷区の玉川高島屋 (写真・田中幸美)
ワカタクには新たなメンバーも加わり、お互い切磋琢磨しながら時代を切り開く新しい和菓子を創造。これまでに新宿店をはじめ横浜店、玉川店、大阪店で数々の個性的で斬新なイベントを開催し、たくさんのファンを獲得してきたほか、今年5月にはシンガポール高島屋でイベントを行い、初の海外進出を果たしました。
そして、今回の玉川高島屋では、「七夕」をテーマにした個性的で斬新な和菓子を提案しています。もちろん、伝統の和菓子や代表銘菓も決して忘れてはいません。

売り場は12の和菓子店の商品が入り交じって並ぶため、お互いの商品の知識も持ち合わせ、お客さまに説明できるようにしています
三大菓子処に数えられる金沢を擁する石川県の「雅風堂」三代目の安田卓司さんが紹介しているのは「星願」(せいがん)という菓銘の棹菓子(さおがし)です。
安田さんは、「白い色のベースに星を見立てたのがきれいだなと思ったので、軽羹(かるかん)を選びました」といいます。軽羹とは、ヤマイモを使って作る蒸しパンのようなものです。真ん中の羊羹は梅酒で香り付けをした青梅の羊羹だそうです。
軽羹の表面の赤や黄色のものは、着色したあんを米粉で混ぜてそぼろ状にした「村雨」(むらさめ)をパラパラッとかけました。「白い色に星が瞬いているみたいな感じを表現しました」と話していました。

「雅風堂」の「星願」は、色目のはっきりした七夕のお菓子が多い中、白い色が新鮮に映ります
次に、「全国和菓子協会」が優れた和菓子職人に与える「優秀和菓子職」に認定された「しろ平老舗」(滋賀県愛荘町)五代目の岩佐昇さんが紹介するのは「光輝く」という菓銘の上生菓子です。
通常、上生菓子はある程度、地元で作り込んで催事に臨みますが、今回はすべて現地で作るそうです。「織り姫はもっと深紅の赤で、彦星は黄色だとか、お客さんによってそれぞれのイメージがあると思います。そうしたお客さんのご要望に応えて、織り姫と彦星をちょっと色を変えるなど調整できたらいいなと思っています」と話していました。ぜひリクエストしたいですね。
そして、「こういう人の集まるところでやらせてもらうといい勉強になります。何を求められているのかわかりますね」とも話していました。

五代目、岩佐昇さんは男気のある職人ですが、作るお菓子はいつもとても繊細です。「しろ平老舗」の「光輝く」
「引網香月堂」(富山県高岡市)の四代目、引網康博さんも「優秀和菓子職」に選定された一人です。その超絶技巧によって花はもとより、かわいらしい動物や歳時記にちなんだものまでさまざまな客からのリクエストに即興で応じます。
そんな引網さんが今回用意したのは、外はカリッと中はしっとりとした「艶干錦玉」(つやぼしきんぎょく)と呼ばれるお干菓子。「お干菓子は、お砂糖の味しかしなくて、あまり変化が少ないことがなんとなくつまらないなと思っていました」といい、今回は「グラッパ」というワインを絞った後の葡萄の絞りかすを使った蒸留酒を入れて香り付けをしました。

「引網香月堂」の「星あい」。器は引網香月堂本店と同じ高岡市にあるシマタニ昇龍工房の新ブランド「syouryu」の「すずがみ」
さらに、七夕ということから「(陰陽)五行思想」の五色のうち、色合いとして和菓子にふさわしくない黒を除き、橙と紫を足した六色で表現したそうです。「箱を開けたときに華やかなキラキラとした感じにしたい」と、四角に切ってモザイク状に並べました。
菓銘は「星あい」。星が会う空という意味で、七夕の夜空のことを「星あいの空」と呼ぶそうです。「名前と姿にちゃんと意味を込めて作りました」と話していました。

上生菓子の実演をする引網さん(右)と、それを見守る中央軒煎餅の山田さん。職人同士切磋琢磨して技を磨きます
四国・徳島といえば阿波踊り。その阿波踊りの歌詞にも登場する老舗「日の出楼」六代目、松村清一郎さんが考案した七夕の和菓子は、昨年の催事で作った「ブルーベリーのモンブラン大福」を応用した和菓子です。菓銘は「七夕重ね」。ブルーベリーのあんの上に同じベリー系のラズベリーのあんを重ね合わせ、織姫と彦星の逢瀬を表現したそうです。モンブランの部分は、ベリーをミキサーでかけて白あんと合わせ、上に寒天をクラッシュ状にしたものを乗せて、天の川を表現しました。「お互いの味を邪魔しないようにトータルな味のバランスを考えて完成させました」と松村さん。

「日の出楼」六代目、松村清一郎さんが考案した七夕の和菓子は、ブルーベリーとラスズベリーのモンブラン大福「七夕重ね」
名古屋市熱田区の「亀屋芳広」三代目、花井芳太朗さんは、細かく刻んだユズを入れた粒あんを、求肥で包みました。求肥には、笹の粉末が混ぜ合わせてあり、ほのかに笹の香りがします。さらに、上部には、寒天と金箔を乗せて流れ星と天の川に見立てて美しく仕上げました。菓銘は「星ながれ」です。星空が美しいといわれる高知県大豊町を思い浮かべて作ったそうです。

「亀屋芳広」三代目、花井芳太朗さんが考案した「星ながれ」 (写真提供・玉川高島屋)
中央軒煎餅(東京都)の三代目、山田宗さん、学さん兄弟は、赤はサクラエビ、黄はトウモロコシ、緑はだだちゃ豆、白はパルミジャーノ・レジャーノチーズ、そして黒がくろまめという風に、5種の素材で5色の短冊を表現したおかきの詰合わせ「徳願ひ」を紹介しています。

「中央軒煎餅」の山田兄弟が開発したおかきの詰合わせ「徳願ひ」
宇都宮市の「高林堂」三代目、和氣康匡さんは5色の短冊を和マカロンで表現した「天の物語」を用意しました。餅の中には星と夜空をイメージした錦玉が入っています。

「高林堂」三代目、和氣康匡さんは5色の短冊を和マカロンで表現した「天の物語」
「七夕」は「サマーバレンタイン」とも呼ばれます。和菓子は四季折々の風景や歳時記を形や色などに込めて表現しますが、この時期にぴったりの見た目にも涼しく、ロマンチックなお菓子がそろいました。
和菓子は、洋菓子のクリスマスやバレンタインのような誰もが知るこれといった定番イベントがありません。少しでもイベント性、テーマ性を持たせることで、これまで和菓子に触れることのなかった人たちへの導入となるといいですね。

「高林堂」三代目、和氣康匡さん(左)と「亀屋芳広」三代目、花井芳太朗さん(左から2人目)は2年前からワカタクに参加しています
(写真はすべて田中幸美)
◆「WAGASHI~和菓子老舗 若き匠たちの挑戦~」は、東京都世田谷区玉川3-17-1の「玉川高島屋」地階催場で、20日(火)まで。午前10時~午後8時(20日は午後6時まで)。問い合わせは☎03・3709・3111。