京都・祇園祭の前半のハイライトとなる前祭(さきまつり)の山鉾巡行(やまほこじゅんこう)が17日、京都市中心部の下京区と中京区を舞台に壮麗に行われました。
祇園祭は八坂神社の祭礼で、日本三大祭の1つに数えられます。平安時代の貞観11(869)年、全国的に疫病がはやった際、疫病退散を祈願して始められました。

長刀鉾を先頭に繰り広げられた山鉾巡行はまるで平安絵巻のようでした=17日、京都市下京区 (写真報道局・鈴木健児撮影)
午前9時、「エンヤラヤー」の掛け声を合図に、長刀(なぎなた)鉾を先頭に全部で23基の山鉾がくじの順番に四条烏丸交差点をゆっくりと出発。長刀鉾には唯一、稚児が乗り込みますが、稚児は「神の使い」とされるため地面に足を付けず、「強力(ごうりき)」と呼ばれる男性に担がれてはしごを登りました。

強力の肩に担がれて、長刀鉾に乗り込む稚児=17日、京都市下京区 (写真・田中幸美)

色鮮やかなタペストリーなどの懸装品(けんそうひん)や豪華な金具で飾られた山鉾が、鉦(かね)や笛の祇園囃子(ばやし)を奏でながら、都大路をゆっくりと進むさまはまるで「動く美術館」です。

山鉾はまるで動く美術品のように豪華絢爛な懸装品で飾られています=京都市中京区 (写真報道局・寺口純平撮影)
四条通麩屋町に差し掛かると、金銀丹青に彩られた鳳凰(ほうおう)の冠をかぶり、赤地の錦に金襴をほどこした衣装に身を包んだ今年の長刀鉾の稚児、林賢人君(京都市立御所南小4年)が、四条通に張られたしめ縄を見事な太刀さばきで切り落とし、沿道からは大きな拍手と歓声が沸き起こっていました。

注連縄を切ると張られていた結界が破れ、本格的な巡行が始まります=17日、京都市下京区 (写真・田中幸美)
四条通では、奉納囃子や渡り囃子と呼ばれるゆっくりとした囃子を響かせ、その後はテンポの速い戻り囃子を演奏して巡行しました。
最大の見せ場は、交差点で山鉾の進行方向を90度転換する「辻回し」です。10トン近くある巨大な山鉾の車輪の下に割り竹を敷き詰めて水を打ち、山鉾の引き手の男性らが音頭に合わせて勢い良く縄を引っぱると、バリバリッ、ギシギシッと豪快な音を立てながら山鉾は向きを少しずつ変えました。沿道に詰めかけた人たちからはさかんに拍手や歓声が送られ、大勢の人がここぞとばかりに懸命にスマートフォンやカメラを掲げて写真を納めていました。

四条河原町の交差点で行なわれた「辻回し」は山鉾巡行の見所の一つです=17日、京都市下京区 (写真・田中幸美)


長刀鉾の辻回し (写真報道局・寺口純平撮影)
祇園祭の昔の呼び名「祇園会」の旗に続き、巡行列の先頭を歩く「祇園祭山鉾連合会」の岸本吉博理事長は「とにかく天気が持ってくれてよかったです」と笑顔で話していました。

笑顔で巡行する祇園祭山鉾連合会の岸本吉博理事長(左から2人目)=17日、京都市下京区 (写真・田中幸美)
今年は3連休と重なったこともあり、昨年より3万人多い22万人(京都府警調べ)の見物客が詰めかけ、目の前で繰り広げられる平安絵巻を堪能していました。山鉾行事は国の重要無形民俗文化財に指定されています。

四条河原町の交差点は、辻回しを見ようと集まった人で埋め尽くされました=17日、京都市下京区 (写真報道局・鈴木健児撮影)
また、夕方からは祇園祭本来のハイライトである「神幸祭」が行われました。午前中の山鉾巡行で祓い清められた後、八坂神社の主祭神の素戔嗚尊(スサノオノミコト)を載せた中御座神輿をはじめとする3基の神輿が氏子地域を一巡し、御旅所に向かいました。

八坂神社の石段下に集結した3基の神輿=17日、京都市東山区 (写真・田中幸美)
24日には後祭(あとまつり)の山鉾巡行が行われ、大船鉾をはじめとする別の10基が巡行します。
◆祇園祭山鉾連合会のホームページは、http://www.gionmatsuri.or.jp/