時代を超えて、地域に愛され続けるおでん。「東京おでんだね」のサイトで東京のおでん情報を日々発信する源太さんに、関東おでんの魅力を聞いた。
ルーツと関東らしさ。
そもそもおでんとは、諸説ありますが、もともとは室町時代に食べられていた、豆腐に味噌を塗って食べる「豆腐田楽」が起源とされています。それが江戸時代に屋台の味として流行し、その後、煮込みのかたちとなって広まったといわれています。
一口におでんといっても、薄口醤油を使った関西風、八丁味噌で煮込む名古屋風など、地方や家庭によってさまざま。なかでも関東風おでんは濃口醤油や砂糖が入って見た目も味も濃厚なイメージがありますが、最近はコンビニおでんの影響なのか薄味の出汁が主流になりつつあります。また具材は、ちくわぶ、はんぺんなどは今も関東風おでんの代表格。ちなみに、スジといえば、関西では「牛スジ」が一般的ですが、関東は同じ〝スジ〟でも「魚のスジ」がお決まり。今では手作りをするお店も少なくなりつつありますが、はんぺんに使うサメの軟骨やスジを無駄なくミンチにしてつくられる魚のスジは、これからも残ってほしい関東おでんの味のひとつですね。
下町に残る蒲鉾屋とおでん種。
かつて東京は、蒲鉾屋さんが非常に多い街でした。江戸時代に人口が急増したことで、その胃袋を満たすべく、日本橋の魚河岸には全国各地から魚が集まり、その魚を加工する蒲鉾屋さんも増えました。それと同時に蒲鉾屋の練り物はおでん種として人気を博し、僕が生まれた昭和50年代は東京に300軒くらいあったようです。その後、食の多様化や後継者不足などで、現在は40軒前後にまで減っているものの、東京の東側、とくに葛飾区には今もなおおでん種の店が残っています。職人さんが魚をさばいて石臼で練るような昔ながらの製法を続ける老舗や、代替わりをして、若いご主人が個性的なおでん種を作って、業界を盛り上げようとする動きもあります。
そうした時代の積み重ねのなかで生まれた種は実に多彩で、これまでに僕が取材したものだけでも、100種類以上。どんな組み合わせでも楽しめる懐の深い味わいは、おでんならではの魅力ですし、現代社会に流れるインクルーシブな価値観とおでんの世界が重なるのもおもしろいですよね。
僕はよく都内を散歩しておじいちゃん世代の店主におでんの作り方を訪ね歩くのですが、皆さん優しく教えてくれます。まるで孫になったような気分で、今の時代に希薄になった人の温もりが感じられてほっこりするんです。エリアによって街の個性や歴史、表情が異なるからこそ、その街のおでんの風景が見えてくる。ぜひ街に出て、味わってほしいですね。

源太さん
東京生まれ。2018年に趣味が高じて、東京のおでん種屋さんを紹介するサイト「東京おでんだね」を立ち上げる。おでん文化を盛り上げるべく、数多くの店を取材。
HP:https://odendane.com/
源太さんが見つけた
東京変わりおでん種

スカイツリー
青海苔が香る、東京スカイツリーの形をした墨田区生まれの揚げ蒲鉾。

餃子巻き
練り物の両端から餃子が飛び出たフォルムに愛嬌あり。

袋詰め
油揚げに白菜、人参、白滝、豚肉、餅が入ったぜいたくな巾着。

野菜揚げ
断面の芸術的な美しさに思わず見惚れる、人参とインゲン入り。

プチトマト
魚のすりみに巻かれたトマトがプチッと弾けるさわやか系。

紅白だんご
紅白の団子状の蒲鉾を串刺しにした、縁起のいいおでん種。