Text=YUHO TANAKA Photography=YOMA FUNABASHI Edit=euphoria factory

青森市/大鰐町/弘前市[東北の宝ものを探して —青森編]

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 新幹線に乗り込んで、いざ本州の最北端にある青森県へ。そこには、古くて、新しくて、美しくて、おいしくて、冷たくて、温かい……“宝もの”がいっぱい。地元の人に尋ねて、自分で感じとって、青森に散らばる宝ものをみつけにいこう。


 いつの間にか、車内でうたた寝をしていたようだ。気がつくと窓の外は、真っ白な世界が広がっていた。東北新幹線で東京から3時間あまりでたどり着いた新青森駅は、朝の慌ただしい東京駅とは別世界のように、静かに雪が降り積もっていた。

アートと縄文を結ぶ

 実は青森県は、美術館の数が全国的に見ても多い。県内には5つの公立美術施設が点在し、現代アートや郷土の作家の作品などを中心に、多彩な展示を楽しむことができる。〈青森県立美術館〉もそのひとつ。館内では青森市出身の版画家の棟方志功や、海外でも人気のある弘前市出身の奈良美智をはじめ、青森ゆかりの作家や国内外のアーティストの作品を目にすることができる。表現者が生まれ、過ごしてきた風土に思いを巡らせながら作品を鑑賞する時間は、旅先ならではの体験だ。

 ゆったりと美術館で過ごしたあとは、すぐ隣の〈三内丸山遺跡〉にも足を延ばす。広大な敷地に復元された縄文時代の住居は中に入ることができ、想像力が掻き立てられる。はるか昔の人びとの暮らしや文化がわかりやすく解説され、歴史にぐっと引き込まれる。私のお気に入りは土偶の展示。表情の違う個性豊かな土偶が並ぶショーケースの前で「どの子が一番可愛いか」と、縄文のクリエーティビティーにたっぷり刺激をもらった。

 昼食に青森市の隠れグルメ「味噌カレー牛乳ラーメン」を堪能。青森の創造力に、視覚も味覚も驚かされながら、その日のうちに次の街へと向かう。

人と温泉のあたたかさに浸る

 JR大鰐温泉駅に到着した頃には、すっかり陽が落ちていた。足早に宿へと急ぐ道中、暗闇でスナックの看板が灯るのが目に入る。

 店内の様子がうかがえないので、一体どんな雰囲気なのかわからない。少し悩んだあと、扉の先の世界への好奇心に背中を押されて、飛び込んでみる。

 この日の〈スナックあゆ〉のカウンターでは、マスターの息子さんの誕生日祝いがささやかに行われていた。偶然居合わせた私とほかのお客さんも、お祝いに加わってバースデーソングを歌い、カットされたケーキのお裾分けをいただく。扉をあける前にあった緊張はすっかりほぐれ、気づけばぬくぬくと腰を落ち着けていた。飛び交う津軽弁の独特な響きも心地いい。常連さんとの会話のなかで「あずましい」という津軽の言葉を教えてもらった。「居心地がいい」という意味で、まさにこの夜にぴったりな表現だった。

 2日目の早朝、6時半。昨夜、マスターに教えてもらった温泉へ行っておかないと、と張り切って早起き作戦を決行する。〈若松会館〉は、地元の人たちの憩いの湯。このあたりの住民は、家のお風呂を使うのは夏場だけで、冬はこの浴場に通う人も多いらしい。身体の芯からじんわり温まり、外に出ると、吐く息が来たときよりもいっそう白くのびた。


継ぎ、伝える。弘前市の文化と記憶

 旅の折り返し地点になると、名残惜しさが先走ってお土産のことばかり考えてしまう。弘前駅に着いて、早速、老舗市場の〈虹のマート〉に買い物がてら立ち寄った。

 午前中の市場は活気に溢れ、ツヤツヤの鮮魚に地元野菜、お惣菜などがたくさん並んでいる。私は筋子と焼き干し、そして青森産のりんごを購入。さらにそのあと訪問した〈弘前シードル工房kimori〉ではシードルも手に取る。「そんなに持てるの?」と笑われながら、この土地で出会った美味しいものたちで、エコバッグが膨れる感覚が、うれしくて仕方ないのだ。

 江戸時代には城下町として栄え、現在も城跡や武家屋敷など歴史的景観が残っている弘前の街。そんな街でひときわ存在感を放っていたのが〈御用御菓子司 大阪屋〉。「うちは昔、津軽藩に菓子を納めていたんですよ」と店奥から社長さんがやってきて、当時お菓子を運ぶために使われた重箱を見せてくれた。螺鈿(らでん)細工が施されたそれは、まるで宝石箱のよう。店内の什器にも箱の一部が再利用され、なかには菓子がしまわれていた。

 古いものを大切に継ぎ、伝える。ただ保存するだけではなく、必要に応じて形を変えながら、日々の営みのなかで息づかせていく。そうした精神性を、弘前ではいっそう強く感じた。

 〈弘前れんが倉庫美術館〉もそのひとつで、明治・大正期に建てられたシードル工場を改修し、当時の記憶を引き継ぎながら、この街で新たな役目を担っている。

 伝統を継いでいくという意味で「津軽こぎん」の美しさも心に刻まれるものだった。旅の最後に訪れた〈弘前こぎん研究所〉で、こぎんは単なる技法ではなく、暮らしの姿勢そのものなのだと腑に落ちた。麻布に綿糸を重ね、黙々と刻まれていく幾何学模様。厳しい寒さや貧しさと向き合うなかで生まれた手仕事は、使うためにこそ美しくあろうとしてきた。その静かな強さに、民藝運動の創始者・柳宗悦(やなぎむねよし)が心を奪われた理由も、自然と理解できる。

 旅で出会った青森の宝ものは、街の片隅や日々の暮らしのなかで、いつでも手の届く場所で光っていた。日常に溶け込んだ美しさこそが、青森の最大の宝なのかもしれない。お土産と旅の記憶をいっぱいに抱えて、列車の席に深く腰をおろした。


青森市

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三内丸山遺跡センター
縄文時代中期の大規模集落跡にある博物館。貴重な出土品や復元された集落を通じて、当時の文化に触れることができる。
住 | 青森県青森市三内丸山305
交 | 車/JR青森駅から約20分、バス/JR青森駅から約30分
@sannaimaruyamaiseki


jreast-takaramono-01_2.jpg© Yoshitomo Nara

青森県立美術館
弘前出身の奈良美智の立体作品「あおもり犬」や、マルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の背景画など名作を数多く収蔵している。
住 | 青森県青森市安田近野185
交 | 車/JR青森駅から約15分、バス/JR青森駅から約20分
@aomorikenbi


大鰐町

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スナックあゆ
カラオケステージが名物。アットホームな空気に包まれ、やさしいマスターが迎えてくれるから、一見さんでも肩の力を抜いて楽しめる。
住 | 青森県南津軽郡大鰐町大鰐湯野川原92-11
交 | 徒歩/JR大鰐温泉駅から約15分


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公衆浴場若松会館
懐かしい雰囲気漂う大衆温泉銭湯。入浴料300円と、地元民が日常使いできるほどリーズナブルな価格と熱めなお湯が魅力。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。
住 | 青森県南津軽郡大鰐町大字大鰐字大鰐59-1
交 | 徒歩/JR大鰐温泉駅から約8分


弘前市

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虹のマート
1956年から続く“弘前の台所”。新鮮な魚介・野菜・惣菜など地元食材が並び、旅行客にも地元の住民にもありがたい市場。市場内にある〈山金りんご小山内商店〉でりんごを購入。
住 | 青森県弘前市駅前町12-1
交 | 徒歩/JR弘前駅から約5分
@nijinomart


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弘前こぎん研究所
伝統工芸「津軽こぎん刺し」の技術を受け継ぎ、製造・普及している工房。古い資料や図案の収集にも力を入れ、次世代へつなぐ役割を担う。
住 | 青森県弘前市在府町61
交 | 車/JR弘前駅から約15分、バス/JR弘前駅から約20分
@hirosaki_kogin_institute


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御用御菓子司 大阪屋
1630年創業、弘前城にもお菓子を納めていた老舗店。なかには江戸時代から製法を変えずに作り続けている和菓子もある。
住 | 青森県弘前市本町20
交 | 車/JR弘前駅から約13分、バス/JR弘前駅から約20分


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弘前シードル工房kimori
弘前のりんごを使ったシードルを生産する醸造所。シードルの有料試飲ができる。店名は豊作を祈って木に残されるりんごの木守から。
住 | 青森県弘前市清水富田字寺沢125(弘前市りんご公園内)
交 | バス/JR弘前駅から約30分
@kimori_cidre


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弘前れんが倉庫美術館
明治・大正期に建てられた煉瓦造りの建物を建築家・田根剛が改修した現代美術館。工場や倉庫として使われていた倉庫の痕跡を残した黒壁に、展示作品が浮かび上がる。
住 | 青森県弘前市吉野町2-1
交 | 車/JR弘前駅から約10分、徒歩/JR弘前駅から約20分
@hirosaki_moca



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