日本三大祭の1つで、夏の京都の風物詩「祇園祭」。ハイライトの山鉾巡行だけでなく、約1カ月にわたって行われてきたさまざまな神事は7月31日の「夏越祭」(なごしさい)をもって終了です。

祇園祭前祭のハイライト、山鉾巡行=7月17日、京都市下京区 (写真・田中幸美)
「祭りは終わってしまったけどせっかく京都に行くのだから山鉾が見たい」という方におすすめなのが、昨年6月下旬にオープンした「祇園祭ぎゃらりぃ」。映像で祇園祭の魅力に触れることができるだけでなく、高さ7メートルのほぼ実物大の鉾(ほこ)に触ることができる体感型施設です。しかし、意外なことにあまり知られておらず、隠れた観光名所となっています。

実物大の鉾が展示されている祇園祭ぎゃらりぃ=7月11日、京都市東山区 (写真・田中幸美)
場所は、京都市東山区の四条通東大路西入ル南側にある「漢検 漢字博物館・図書館」(通称「漢字ミュージアム」)の1階。祇園祭を執り行う八坂神社とは目と鼻の先です。しかもこの施設、なんと入場無料なのです。

祇園祭は八坂神社の祭礼。祇園祭ぎゃらりぃは、その八坂神社のお膝元に位置しています

駒形提灯も飾られています
祇園祭ぎゃらりぃを運営する「祇園祭山鉾連合会」理事の大嶋博規さんに見どころをうかがいました。
なんといっても一番の見どころは、四条通からも見える吹き抜け部分に展示された実物大の鉾です。実際の祭りに使う鉾は、有形文化財なので展示も触ることもできませんが、展示されている鉾には触ることも、鉾の下に潜ることもできます。

鉾の木材を固定する「縄がらみ」という伝統的技法も間近で見ることができます
しかも、部材はすべて本物。ただし、車輪と車軸は江戸時代のものを使っているそうです。実際の祭りのときには、タペストリーや絨毯などの懸装品で鉾は覆われてしまいます。しかし、展示鉾は胴側の一面を外しているので、縄で木材を固定する伝統的な「縄がらみ」の技法やエビなど動物の形に似た「飾り結び」などを間近で見るだけでなく、触れることもできます。

実際の鉾に触るなんてとんでもないことですが、ここでは自由に触れることができます
実際の祭りで縄がらみを見ようとしたら、山鉾巡行の数日前の鉾建てのわずか1、2日だけ、しかも囲いの外からに限定されてしまいます。

実際の鉾建ての作業は遠回しに見守ることしかできません=7月11日、長刀鉾
大嶋さんは「もし、くぎを使って建てていたら200年もすればぼろぼろになっていたでしょう。縄がらみは、木材を傷めません。ここでは常時見ることができるので、ぜひじっくり見ていただきたい」と話します。

理事の大嶋博規さんをはじめとする「祇園祭山鉾連合会」の方々は、祇園祭の安定的な存続とPRに尽力しています
放下鉾などの懸装品を手掛けた染織家、皆川泰蔵氏の見送(綴織り)も展示されています。

染織家、皆川泰蔵氏の見送「VILLA TIVOLI」は、15世紀に造園されたローマ郊外のティヴォリにあるルネサンス様式の噴水を画題にしています
もう一つの目玉は、70インチサイズ6枚を組み合わせた屏風型の大型モニターに映し出される実際の祇園祭の山鉾巡行のシーンや、33基の山鉾すべてを紹介する映像です。「平成の洛中洛外図」というコンセプトで最新の4K映像とCGを組み合わせて制作したそうです。

屏風型の大型モニターに映し出される33基の山鉾
映像は2015年、台風の中決行された山鉾巡行を撮影しました。強風雨の中、ずぶぬれになりながらの巡行でしたが、「放下鉾の下に設置したカメラにはポタポタと落ちる雨の雫まで鮮やかに映し出され、貴重な映像となりました」と大嶋さんは振り返ります。確かにギシギシという音をたてながら動く車輪を至近距離から撮影した映像はかなりの迫力です。

鉾の車輪の下に設置されたカメラの映像は大迫力です

屏風モニターはさらに、能楽金剛流若宗家・金剛龍謹(たつのり)さんの舞いとCGを組み合わせて仕上げた幻想的な映像へと続きます。舞いは、長刀鉾に縁のある演目「小鍛冶」と、菊水鉾の由来となる「枕慈童」です。

長刀鉾にゆかりのある能の演目「小鍛冶」を舞う金剛流若宗家・金剛龍謹さんの映像
こうした約15分に及ぶ映像は、娯楽、ドキュメンタリー、ニュースなどのテレビ番組から、アニメーション、広告、ウェブデザインなどを含めた総合メディアコンテスト「World Media Festival Hamburg 2017」で銀賞を受賞したそうです。これは、是非とも見たいですね。

さまざまな祇園祭グッズもそろっています
大嶋さんは「とにかく平成の洛中洛外図を見に来ていただきたい」と話します。
祇園祭は1150年以上の歴史を持つ日本で最大の祭りです。京都を旅することがあるなら、来年の祇園祭の予習としてぜひ「祇園祭ぎゃらりぃ」を訪れることをお薦めします。そこには祇園祭の魅力のすべてが詰まっています。 (写真はすべて田中幸美)
◆「祇園祭ぎゃらりぃ」は、京都市東山区祇園町南側551、午前9時30分~午後5時(月曜休館)。公式ホームページは、http://kyotogg.com/