春日大社の監修のもと、第二殿の社殿が実物大で再現されました=東京・上野の東京国立博物館  (写真・田中幸美)

《上野》式年造替を記念して、特別展「春日大社 千年の至宝」 平安の美を結集した工芸品250件


 世界遺産・春日大社(奈良市)の「式年造替」(しきねんぞうたい)」を記念して、東京・上野の国立東京博物館で特別展「春日大社千年の至宝」が3月12日まで開催されています。式年造替は、20年に1度行われる社殿の大修理のことで昨年、60回目が行われたばかりです。

出展250件のうち100件以上が国宝と重要文化財の特別展「春日大社 千年の至宝」の会場  (写真・田中幸美)


式年造替のハイライトとなる神様を新しい社殿にお移しする儀式「正遷宮」=2016年11月6日、奈良市の春日大社(写真報道局・門井聡撮影)


式年造替のハイライトとなる神様を新しい社殿にお移しする儀式「正遷宮」=2016年11月6日、奈良市の春日大社(写真報道局・門井聡撮影)


 特別展では、春日大社の神様に奉納され、社外ではめったに拝観することができないさまざまな「古神宝」(こしんぽう)が展示されています。出展250件のうち、国宝と重要文化財は100件以上に及び、平安貴族の美意識を反映させ、当時の最高技術で作られた工芸品が時を超えて私たちの目の前に現れました。
 また、春日大社第二殿の社殿を実物大で再現したり、毎年2月と8月に石灯籠に明かりを灯す幻想的な「万灯籠」(まんとうろう)を再現したコーナーを設けるなど、神様を身近に感じられる工夫も施されています。

会場に再現された万灯籠のコーナーに限って写真撮影ができます=東京国立博物館  (写真・田中幸美)


 春日大社は、奈良時代の初めに国家の平安と国民の繁栄を祈願するため、創建されました。奈良といえば奈良公園の鹿ですね。春日大社と鹿は切っても切れない関係にあります。春日の神様は鹿に乗って常陸国(茨城)鹿島から春日に降り立ったという伝承があるからです。
 「鹿島立神影図」は、春日の神様がまさに降り立った画像で、ご社殿の背後にある「御蓋山」(みかさやま)と春日山の2つの山並みも描かれています。この山並みは「春日宮荼羅」(かすがみやまんだら)にも描かれています。

「鹿島立神影図」南北朝~室町時代・14~15世紀 春日大社蔵(通期展示)


 さらに鹿島立神影図の画像には、榊の木の枝に藤の花が描かれています。東京国立博物館の土屋貴裕主任研究員は、「春日大社は藤原氏の氏神として崇敬を受けてきました。神様に寄り添うように藤の花が描かれているのが象徴しています」と話していました。
 ちなみに展覧会の作品で鹿の姿が描かれているものには、展示説明板の左上に鹿のマークが添付されています。鹿がどこにいるか探しながら展覧会を楽しむのも趣向がありますね。

まさに神様が乗られた鞍を象徴的に表した「神鹿鞍」(しんろくのくら)  (写真・田中幸美)


 春日大社に祀られた神様の霊験を描く全20巻からなる絹の絵巻「春日権現験記絵」(かすがごんげんげんぎえ)は、鎌倉時代に描かれました。土屋研究員によると「日本の絵巻史上としては最高傑作といわれる作品」だそうです。これも注目作品です。

「春日権現験記絵(春日本)」巻十二部分 江戸時代・1807(文化4)年 春日大社蔵(通期展示・場面替あり)


「春日権現験記絵(春日本)」巻十二部分 江戸時代・1807(文化4)年 春日大社蔵(通期展示・場面替あり)


 さらに4つある社殿のうち「経津主命」(ふつぬしのみこと)が祀られる第二殿は春日大社の監修のもと実物大で再現されています。思わず手を合わせたくなります。社殿をつなぐ左右の壁画は「御間塀」(おあいべい)と呼ばれ、神馬や獅子とボタンなどが描かれています。これらは実際の社殿に掲げられていて、昨年の式年造替の際に社殿から降ろされた貴重なものです。

春日大社の監修のもと実物大で再現された第二殿  (写真・田中幸美)


 式年遷宮で有名な「伊勢神宮」(三重県伊勢市)は20年に一度、社殿と神宝をその都度作り替えますが、春日大社では今まであるものを大切に守り伝える昔からの習わしがあります。
 天皇や有力貴族は当時最高とされた工芸品を京都や奈良の社寺に奉納しました。京都では応仁の乱やその他の戦乱でかなりの数が焼失してしまいましたが、春日へ奉納されたものは現在まで継承されているそうです。平氏による南都焼き打ちなどで東大寺や興福寺は焼亡しましたが、春日大社に火がつけられることは一度もありませんでした。「そのため春日大社にしか残っていない〝秘宝〟は何十もあり、それらを総称して『平安の正倉院』と呼ばれるのです」と花山院弘匡宮司は話していました。

春日大社の花山院弘匡宮司  (写真・田中幸美)


 秘宝には、鏡台や化粧道具などを入れる手箱などがあります。ほとんどが平安時代に制作されたものばかり。また、左大臣・藤原頼長が奉納したとされる矢を刺す道具「平胡簶」(ひらやなぐい)はその中でも貴重な作例だそうです。
 そして、神宝の最高傑作ともいわれるのが国宝の「金地螺鈿手抜形太刀」(きんじらでんけぬきがたたち)です。螺鈿は貝を削って表面にはめこんで装飾とした物です。ネコがスズメを捕らえている場面が画題になっていますが、当時の宋ではやっていた画題だそうです。

展示された「金地螺鈿手抜形太刀」を見入る花山院弘匡宮司 (写真・田中幸美)


 展示されている太刀は、1930(昭和5)年の第56次式年造替の際に撤下(てっか・神仏に奉られたものがお役目を終えて下げられること)されるまで、本殿に奉納されていたものです。花山院宮司は、「今から86年前にお下げして太刀がないままになっていて、神様に申し訳ない気持ちです」と話します。

国宝「金地螺鈿手抜形太刀」平安時代・12世紀 春日大社蔵(2月19日まで展示)


国宝「金地螺鈿手抜形太刀」部分 平安時代・12世紀 春日大社蔵(2月19日まで展示)


 そこで、昨年の式年造替にあたり、復元品が制作され神前へ奉納されました。復元されたものはすでに神前にあるため、残念ながら私たちが見ることはできません。復元にあたっては、人間国宝となっている各分野における現代の名工が集まり、技術の粋を集めた最高級の太刀が作られました。
 花山院宮司は「一番シンボリックなものから復元したら20年後に何かまた復元するときに道筋になるのではないかと考え、平安時代の工芸品としては究極のものである太刀を復元しました。昭和5年に下ろしたものをこれから20年に1度、千年をかけて復元して戻していくつもりです」と話していました。

 ◆「特別展 春日大社 千年の至宝」は東京都台東区上野公園13-9の東京国立博物館で。3月12日(日)まで。午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜休館。問い合わせは☎03・5777・8600(ハローダイヤル)。
詳しくは公式ホームページは、http://kasuga2017.jp/



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