「飛鳥入稿」(油彩画・1995年)みなとみらいを背景に大さん橋を目指してゆっくりと航行するクルーズ船「飛鳥」。右舷後方から見た飛鳥の量感ある船姿を見事にとらえています

《横浜》企画展「柳原良平 海と船と港のギャラリー」開催中、横浜みなと博物館で


 昭和30年代に人気を博したのサントリーのCMキャラクター「アンクルトリス」で知られる画家でイラストレーターの柳原良平さんの没後初の企画展「海と船と港のギャラリー」が横浜市西区の「横浜みなと博物館」で開催されています。絵画をメーンにイラストレーションや絵本絵画、ポスターなど約150点を展示。「みなさんと一緒にこれからも海と船と港への思いを広げていきたい」という生前の柳原さんの言葉通り、楽しく明るく海と船に親しむ企画展になっています。

画家でイラストレーターの柳原良平さんの没後初の企画展「海と船と港のギャラリー」には作品だけでなく、制作に使用した絵の具や筆、イーゼルなども展示しています=横浜市西区の「横浜みなと博物館」(写真・田中幸美)


 柳原さんは、京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)工芸科を卒業後、寿屋(現サントリー)に入社。濃さの違う紙や色紙を切って制作する切り絵というオリジナルスタイルで、広告デザインの世界で30歳でデザイナー、イラストレーターとしての地位を確立しました。特に柳原さんの名を不動のものにしたのはトリスウィスキーのキャラクター「アンクルトリス」です。「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」という当時同僚だった作家の山口瞳さんのキャッチコピーとともに一世を風靡しました。
 その後、幼少のころから好きだった船の絵を本格的に描き始めました。「船の見えるところに住みたい」と1964年、横浜市中区山手町に転居。世界と日本の港をめぐっては大好きな船に乗り、横浜の港と船を絵と文にして各地で個展を開くなどしました。海と船に関する創作は、長いこと定着していたアンクルトリスのイメージを解き放つことになりました。柳原さんの絵はどれも明るい色調と親しみやすいタッチが特徴です。
 昨年8月、病気のために死去。今年4月、夫人のかおるさんがイラストレーションや絵画など計4848点を横浜市に寄贈し、柳原さんが帆船日本丸の横浜への誘致に携わったことなどから、日本丸メモリアルパーク内にある「横浜みなと博物館」で保管することになりました。そして、作品リストの編集などを終えた没後1年のタイミングで初の本格的な企画展を開催したということです。

企画展会場の入口には柳原さんの写真が飾られています


「ポスター トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」(寿屋・1961年)


「アトリエ」(リトグラフ・2000年)  海が見えるアトリエで油絵を制作するアンクルトリス。世界各地で集めた船の民芸品や模型など好きなコレクションに囲まれて船を描く、いわば柳原さんの自画像です


 企画展では、4つの期間に分けて代表的な作品を年代順に紹介しています。最初の絵本「たぐぼーとのいちにち」(1959)の原画から、一躍有名となったサントリートリスウィスキーのポスター(1961)、100号の大作油彩画「飛鳥入港」(1995)、そしておそらく最後の作品となったと思われる油彩画「QE(クイーン・エリザベス)」(2014)までどれも見応えがあります。また、時代によって手がける作品のウエートや特徴が移り変わる様子が伺えてとても興味深いです。
 横浜みなと博物館の志澤政勝館長は「対象に対する愛情が出ています。ある面好きなものだけを描いていたのは幸せなことですね」と話します。また、常設展示にしてほしいという声も多数あることから、検討している最中ということです。
 横浜みなと博物館は、保存・展示されている巨大な帆船「日本丸」を中心とした約3万8000平方メートルの敷地の公園「日本丸メモリアルパーク」内にあります。柳原さんの絵を堪能したら、日本丸を眺めながら公園で海風を受けるのも楽しいですね。

「ポスター YOKOHAMA」(横浜市観光協会・1981年)  当時の横浜の観光施設と出入りする船という横浜の魅力を圧縮して表現


「横浜港 QE2と富士」(リトグラフ・1988年)  大さん橋に着桟するクイーン・エリザベスⅡを左舷後方から描いています。縦の画面いっぱいに姿を現わした客船の大きさと迫力が圧倒的です。横浜名物の3塔から横浜港とわかります 


「シンボルタワーとマリンシャトル」(切絵・1987年) 刊行物「よこはま港」第10号の表紙になりました



「QE」(油彩画・2014年)  2014年の個展には新作の油彩画は100号を2点出展しました。「にっぽん-富士山ー」とこの作品です。近年のクルーズ客船の中では船らしい形をしていると、QE(クイーン・エリザベス)はよくモチーフに取り上げました。確認されている最後の油彩画の1点です


横浜みなと博物館は、保存・展示されている帆船日本丸を中心とした「日本丸メモリアルパーク」の敷地内にあります(写真・田中幸美)


◆「企画展柳原良平 海と船と港のギャラリー」は、横浜市西区みなとみらい2-1-1の「横浜みなと博物館」で11月6日(日)まで。午前10時~午後5時、月曜休館(10月10日は開館し、翌11日が休館)。大人200円、高校生以下と65歳以上は100円。問い合わせは☎045・221・0280。


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