史上最多の41個のメダルを獲得し、感動と興奮のうちに終了したリオデジャネイロ五輪。22日朝(現地時間21日夜)に行われた閉会式では、次回大会を開催する東京による約8分間のパフォーマンスが行われました。50人のダンサーが、光を放つフレームを駆使しながら、和の動きも織り交ぜたダンスなどでさまざまな表情を見せ、最後には「2020年東京五輪」のエンブレムである市松模様に収束させる見事な演出で世界に東京を強く印象づけました。
その中で、空中を埋める躍動感と華やかさでひときわ注目を集めていたのが、青森大学男子新体操部(青森市)のメンバー20人です。フレームを移動させながらの側転やバック転、隊列をつくっての連続バック転、そして約4メートルの高さでのバック宙などを次々と披露し、会場の観客ばかりでなく、テレビの前の人たちを釘付けにしました。
青森大学男子新体操部は、中田吉光監督の就任と同時に2002年に創部、現在約40人の部員からなります。全日本学生新体操選手権(全日本インカレ)では負けなしの14連覇、全日本選手権でも2年連続11度目の優勝を誇る向かうところ敵なしの王者です。今月25日~27日に開催されるインカレでも連覇の更新が期待されています。
男子新体操は五輪種目になっていませんが、実は日本発祥の競技です。青森県は1977年の青森国体を機に、実力のある指導者を招くなどして本格的に取り組み、今や「新体操王国」と言われるまでになりました。青森大学の系列で、荒川栄監督率いる青森山田高校男子新体操部も今年のインターハイこそ3位に終りましたが、創部34年で、28回の団体全国優勝と15回の個人全国優勝を誇るなど輝かしい実績を持っています。

躍動感あふれ華麗で緻密なパフォーマンスで魅了する青森大学男子新体操部のメンバー(写真・川口良介)

次回開催地東京への「フラッグハンドオーバーセレモニー」で東京をアピールする50人のダンサー(写真・川口良介)
男子新体操は、戦前の「団体徒手体操」が原形となっています。しかし、国際体操連盟からは競技種目として認められず、2009年には国体の競技からも外されました。数年前までは地元青森県民でさえその輝かしい功績をよく知らなかったのです。
しかし、中田監督や荒川監督が、とにかくいい選手を育てて強いチームを作ることだけにとどまらず、男子新体操の認知度アップや活躍の場の拡大などに乗り出したのです。2校によるCM出演やデザイナーの三宅一生氏のプロデュースによる公演「青森大学男子新体操部」(2013年)、さらにそれが「FLYING BODIES」という記録映画にもなりDVD化もされました。また、続行したくても大学卒業と同時に競技から離れざるをえないOBたちを集めて、新体操とストリートダンスを融合させた異色のパフォーマンスグループ「BLUE TOKYO」(ブルートーキョー)を結成。OBの中には「シルク・ドゥ・ソレイユ」のメンバーに採用されるなど、エンターテインメントの世界では一定の評価を受けています。
今回の閉会式の抜擢は、非五輪種目ながら今後の国際化に期待できる日本発祥の新しいスポーツであると評価され、青森大学の参加が決まったそうです。これを機に男子新体操の魅力に多くの人が気付くとともに、日本発祥の誇るべき競技としてますます発展することを願ってやみません。

青森大学男子新体操部の演技=2016年1月、青森市のリンクステーション青森(写真・田中幸美)

青森大学男子新体操部OBからなるパフォーマンス集団「BLUE TOKYO」のステージ=2015年1月、青森市のリンクステーション青森(写真・田中幸美)