近代洋画を牽引(けんいん)した洋画家、藤島武二(1867~1943年)の生誕150周年を記念する展覧会が東京の練馬区立美術館で開かれている。
東京美術学校(現・東京芸大)の教授として、小磯良平ら次世代の画壇を背負う多くの優れた人材を育てた藤島。穏やかな色彩で風格ある写実画で知られるが、本展の展示作品を見ると決してそれだけではない多様性が見えてくる。
イタリアの風景を描いた「糸杉」は、糸杉を単純化した黒っぽい色面でとらえ、台湾の建物をモチーフにした「台南聖廟」は、茶色の壁が強調され平面的に描写。晩年訪れた中国の風景を題材にした「耕到天」や「中国風景」は、細部へのこだわりはなく事物が抽象化されている。初期の陰影表現を用いた写実的な作品とはイメージが大きく異なり、藤島の懐の深さを示している。