Illustration:Nozomi Yuasa

《ファインダーをのぞいて カメラ女子の撮影日記》⑤東京駅の夜景を美しく撮る「マニュアル」設定に挑戦!


 メトロポリターナ編集部の自称「カメラ女子」が、ベテラン写真家しょうめい先生に弟子入りし、撮影術を実践で学ぶステップアップ連載。今回は東京駅のすてきな夜景を収めるため、中級者への入り口ともいえるマニュアル撮影に挑戦!「ISO感度」「シャッタースピード」などを難解な専門用語とも格闘しながら設定し、カメラ任せのオートとひと味違う1枚を目指しました。

”段階露出”で、広がる表現


 これまで海外旅行中に立ち寄った展望台や、高層階のレストランから眺めた夜景に心奪われ、思い出とともにいつまでも記録に残したい!とスマホやカメラを手にしたことは数知れず。でも、仕上がりを見ると実際の美しさとはほど遠い…なぜか分からず、涙ながらに記憶にのみ焼き付けてきました。
 そんなわたしに、しょうめい先生から「そろそろマニュアルで撮影してみようか。夜風が気持ちの良い季節になったので、夜景スポットの東京駅を撮って、いろいろな設定を試してみよう」と提案が。いや、難しい夜景こそ、優秀(=高価)な”マイ一眼レフ”を信じてオートで撮りたいな~、と最初から腰が引け気味です。
 訪れたのは新丸ビル7階「丸の内ハウス」のテラス。夜風を感じながら、ライトアップされたレンガ造りの東京駅舎を眼下に眺める絶好のロケーションです。
 早速、ダイヤルをマニュアル「M」に合わせ、先生の言うとおりF(絞り)値は「8」、ISO感度は「200」に設定。「今日は”段階露出”を学んでみよう。ISO感度やシャッタースピードについて理解すること。数値を変えると被写体がどう見えるか、段階的に試して撮っていくのが課題だよ」と先生。”イ・ソ・カ・ン・ド””シャ・タ・ス・ピ・ド”と聞き慣れない言葉が続き、頭の中で片言の外国人のような発音に…
 詳しい用語解説は文末に回しますが、ISO感度は数値を上げると明るく写りますが、画質がざらつく。一方、シャッタースピードは遅くすると明るく写りますが、”ぶれ”が出やすくなります。今回は動かない被写体、かつ特別に許可を得て三脚も使用し、手ぶれの心配がないのでシャッタースピードを遅めに設定し、「5秒」「1秒」「1/3秒」の3パターンを試してみました。

camera1 0522.jpg

 確かに、同じ景色が全く違う時間帯のように見えます。5秒は明るすぎ、1/3秒は暗すぎで、やはり1秒が最適だなと感じました。設定を変えながら撮るとわざと暗めに撮ったり好みを反映でき、誰が撮ってもほぼ変わらないオートと違って個性を出せますね。
 また、ISO感度の設定を最大の「2万5600」に上げてみると、ざらざらの画質に。

camera2 0522.jpgISO感度を上げると、シャッタースピードを速くできるので”ぶれ”の心配はなくなりますが、画質が荒くなります。どちらを重視して撮影するかによって、写真は別物に。

 先生は「夜景をクリアな画質で撮るには、低感度でF値を『8』ぐらいまで”絞る”ため、シャッタースピードが遅くなる。基本は三脚を使った方がいいね。ただ、ISO感度を『3200』まで上げ、シャッタースピードは『1/60~1/80秒』ぐらいの範囲ならば手持ちでも撮れる。マニュアルで設定を調節することで、表現の幅は飛躍的に広がっていくはずだよ」
 なるほど…。わたしは三脚を持っていないので、手持ちでも撮れる設定を覚えておこう。ちなみに、夜景をオートで撮るとシャッタースピードが遅くなるので、手持ちは厳しいとのこと。
 最初は四苦八苦しましたが、シーンによって数値をいじれるのって、まさに一眼レフの醍醐(だいご)味だし、なんだかかっこいい!シャッタースピードを一つ変えるだけでかなり明るさにも違いがでるので、いろいろなシーンを撮ってしっくりくる設定を探し、覚えていこうと思いました。次は夏頃に花火なんかも撮れるようになりたいな~。

camera girl watanabe HDR.jpg先生によるお手本の1枚。幅広い明るさを表現できる「HDR」という技術を使い、駅舎や空、オフィスビルがいずれもクリアに表現されている。

 最後に用語解説。今回、取り上げた2つの設定について専門書やネットを調べ、自分なりにかみ砕いてみました。

 ISO感度 レンズから取り込んだ光をカメラがとらえる能力を表す値。マイ一眼レフは「100~2万5600」までの数値で調整でき、感度を上げる(数値を大きくする)と暗い場所でも明るく写るが、画質にざらつき(ノイズ)が出る。

 シャッタースピード シャッターボタンを押してから、露光が終了するまでの時間。「4000分の1秒~30秒」までの表示があり、スピードが速いほどレンズから光を取り込む時間(量)が少なくなり、写真は暗くなる。一方、遅くすると写真は明るくなるが、ペットなど動いている被写体の”ぶれ”が出やすくなる。

 今回、撮影した丸の内ハウス(千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル7階)は、個性的なレストラン、バー9店が集まった”街のゲストハウス”。スパニッシュイタリアン、和食、中華、おそばなど好きなお店のテークアウトメニューをテラスで楽しむことも出来ます。テラスは23時までですが、お店は平日朝4時までオープンしているので、2次会などにもぴったりですね。
 営業時間:11:00~翌日4:00(店舗により異なる、日・祝・連休最終日は23:00まで) ※テラスは11:00~23:00(強風などで閉鎖の場合あり)

 http://www.marunouchi-house.com/

marunouchi-house0522.jpg丸の内ハウスのテラスは駅舎を眺めながら、食事やドリンクが楽しめる。

※カメラ女子への激励や、しょうめい先生に教えてほしいことなどご意見・ご感想を募集します。編集部(question@metropolitana.jp)までどしどしお送りください!


camera-girl-center.jpgカメラ女子 メトロポリターナ編集部の韓国アイドル好きアラサー女子。ニューヨークの伝説的写真家ソール・ライターの作品に触発され、一眼レフカメラを購入したが、いまいち巧く撮れない。いま撮影するのは海外旅行のときぐらいなので、この連載で写真術を学び、いつか”推し”のアイドルを撮るのが野望。

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しょうめい先生 新聞社で報道写真を撮り続けて40年以上のベテランカメラマン。ライフワークとして鎌倉の景色を撮り続けるほか、某大学芸術学部の写真学科で講師も務める。鎌倉ドローン協会の理事の肩書きを持ち、最新の撮影グッズにも精通している。

Illustration:Nozomi Yuasa

※隔週水曜掲載

 


 


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