ロイヤルパークホテルの開業30周年を盛り上げる「アンバサダー」のスタッフが、地元の粋な街、日本橋を心を込めてガイドする短期連載。第10回は地下1階のメインバー「ロイヤルスコッツ」のサービスを担当する田中裕也さんが、金融街を象徴する日本銀行本店を見学しました。
「通貨の信認」守る知恵
江戸時代に幕府が金貨を製造していた「金座」。銀貨を造っていた銀座は高級ショッピングセンターに様変わりしましたが、日本橋本石町にある金座跡地は、名前のなくなったいまも貨幣の街の雰囲気を漂わせています。日本で唯一、お札を発行する発券銀行、日銀の本館が建っているためです。
館内の見学コースに足を踏み入れた田中さんは「高校時代は建築科で学んだので、日本人の設計による最初の本格的な洋風建築としてずっと興味があったんです」と声を弾ませます。
物価や金融システムの安定を担う日銀は、西南戦争後の激しいインフレ(物価上昇)を受けて1882年に開業。当初は隅田川にかかる永代橋近くに店舗を借りていましたが、96年に貨幣にゆかりのある現在の地に本館が完工しました。東京駅駅舎などを設計した辰野金吾博士が手がけた地下1階地上3階の石積みレンガ造りの建物の威容は歴史の重みを伝えています。
現在は免震化工事中で公開を休止している旧地下金庫は重さ25tの扉のほか、非常時に大量の紙幣が持ち出されないよう、近隣の日本橋川の水を引き込んで部屋全体を冠水させる仕組みも。「生活の基盤となる通貨の信認を守るための知恵は、現役職員からしても感心させられる建物です」(広聴・図書グループ長の川村憲章さん)
本店のうち「新館」「旧館」は通常のコースでしたが、国の重要文化財でもある本館は工事中で残念ながら外観のみ。でも、田中さんは憧れの建物を間近で見学し、「建築技術が進んでいない明治時代にどうやって重い石造りの外壁を運んだのかなど想像が膨らみ、すごく面白い」と大満足の表情。1億円分の模擬紙幣を持って重さ(約10kg!)を知る人気コーナーも体験し、笑顔で写真に収まりました。
見学に続き、道を挟んだ貨幣博物館に向かいます。古代の「和同開珎」をはじめ、中世、近世、近代と歴史を彩った”本物”のお金がずらりと並ぶほか、流通当時の様子を伝える絵などで歴史を学べます。案内してくれた学芸員の関口かをりさんは「毎日使う身近なものなので、親しんでもらいたい」と話します。
歴代の日銀券が並ぶショーケースを眺めると、田中さんは所有する100円札を発見し、「祖母から譲り受けたので、お守りとして持ち歩いています」。額面以上の価値ともいえる不思議な力を感じているようでした。
変遷するお金の基本が「信頼」にあると実感した田中さん。普段の接客と通じる部分を見つけ、「日本橋は人として成長させてもらえる街ですね」とつぶやきました。
日本銀行本店(中央区日本橋本石町2-1-1)
見学日:月曜~金曜 ※祝日、12月29日~1月4日を除く
見学時間:9:45、10:45、13:45、14:45からのいずれも1時間程度。
定員:各回先着20人
対象:小学5年以上(小学生は要保護者同伴)
料金:無料
予約・問い合わせは、TEL 03-3277-2815
日本銀行金融研究所貨幣博物館(中央区日本橋本石町1-3-1)
開館時間:9:30~16:30
休館日:月曜(祝休日除く)、12月29日~1月4日 ※最新の情報は、ホームページ(http://www.imes.boj.or.jp/cm/)へ。
料金:無料
TEL 03-3277-3037
[きょうのアンバサダー]
田中裕也さん
地元住民らも通うロイヤルスコッツの接客を担当し、ホテルの魅力を「和・洋・中から軽食・スイーツまで、いたるところにおいしさが詰まっています」と話します。
30周年を祝うセレブレーションアフタヌーンティーセット
ロイヤルパークホテル(中央区日本橋蛎殻町2-1-1)の1階ロビーラウンジ「フォンテーヌ」は6月30日(日)まで、開業30周年を記念し、金箔(きんぱく)をあしらったセレブレーションアフタヌーンティーセットを提供しています。パンナコッタとメロンのグラスデザートやマカロン、キッシュのほか、ホテルの旧式ルームキーを再現したチョコレート細工など歴史を”味わう”ことのできるセットになっています。
提供時間:11:00~17:00
料金:1人4752円