6月に開業30周年を迎えるロイヤルパークホテルの「アンバサダー」を務めるスタッフが、地元の粋な街、日本橋を心を込めてガイドする短期連載。第8回は3階バンケットの料理を手がける調理部の相馬慶輔さんが、包丁を中心とする刃物の老舗、日本橋木屋本店を案内します。
江戸時代から続く歴史の深さ
日本橋のたもとから続く中央通りの沿道は百貨店や銀行、商業ビルが並び、江戸時代に商家が集まった”室町”の面影をしのばせます。その一角にある木屋本店に入ると、大きさや形状、素材もさまざまな包丁が壁一面にずらりと並んでいました。店内には包丁やはさみ、箸、和食器など幅広い商品がそろうほか、試し切りや”研ぎ”のコーナーを設置し、主婦や観光客、料理人風の客まで幅広い層が訪れ、活気があふれています。相馬さんは「専門学校に入り、学校指定以外の包丁を探していて知りました。料理人の最初の一歩ですね」と振り返ります。その際に購入した1本は、いまも大切に使っているといいます。
刃物を祖業とする木屋は、漆器を扱う本家から「のれんわけ」の形で独立し、寛政4(1792)年に創業。歴史を裏付けるように、1805年ごろの日本橋から今川橋までの大通りを描いた絵巻物「熈代勝覧(きだいしょうらん)」には、いまも木屋の商標として残る「井筒木」の紋の入ったのれんが見られます。本店長の金子正明さんは店内に飾った複製を見て、「(1990年代後半に)絵巻物が発見され、紋が入っていたのを知り驚き、歴史の深さを実感しました」と感慨を込めて語ります。
当時から100mほども離れていない場所で営業する本店は、約300種類の包丁がそろいます。代表的なのが、1956年に発売したロングセラー「エーデルワイス」。さびにくいステンレス刃にオーストリアの新鋼材を採用し、鋼に比べて劣るとされていた切れ味を改善しました。いまでは食洗機対応もラインアップするなど時代の変化にも対応し、家庭を中心に息の長い人気を誇っています。
フランス料理コンクールの新人部門で日本一に輝いたこともある相馬さんは、欧州の騎士に人気があったダマスカス鋼の刀剣の模様を再現した包丁に興味津々。刃表面に流水紋のような模様があり、「切れ味や使い心地に加え、デザインも気になるので、特別感があって格好いいなと思いました」と目を細めます。
ダマスカス鋼の模様を再現した包丁。「素材を重ね、ハンマーでたたいてひずみを出すことで模様にしている」(金子さん)という。
金子さん(右)と相馬さんは、包丁談義に花が咲いた。
一方で、鋼の和包丁は、全国各地の有名鍛冶職人が手作りする逸品など老舗ならではの品ぞろえ。匠の”作品”ともいえる包丁は10万円以上することも珍しくありませんが、発注から「数年待ち」(金子さん)の状態。国内の料理人らのみならず、最近は海外の収集家が買い求めにくることもあるといいます。
国内各地や海外から和包丁を求める人が日々訪れますが、製造を担う鍛冶職人の後継者不足は深刻です。金子さんは「世界有数の商業都市である日本橋で、本物の道具の良さを発信し、守りたい」と力を込めます。 本物の数々を手にし、相馬さんは「切れる包丁は断面が違うし、効率も上がります。自分の腕も同じように、磨き上げていきたい」と前を向きました。
日本橋木屋本店(中央区日本橋室町2-2-1 コレド室町1階)
営業時間:10:00~20:00
定休日:1月1日
TEL 03-3241-0110
[きょうのアンバサダー]
相馬慶輔さん
調理部の3階バンケット担当として、宴会などの肉や魚、スープなど温かい料理を手がけ、「ホテルの魅力は、どこのレストランもおいしい」とアピールします。
30周年特設記念ページ(https://www.rph.co.jp/30th/)
夏の定番”涼麺”が13日(月)スタート
ロイヤルパークホテル(中央区日本橋蛎殻町2-1-1)の中国料理「桂花苑」は5月13日(月)から、夏の定番メニュー、涼麺2種の提供をスタートします。「冷やし担々麺」は豊かなごまの香りとピリッとした辛さを、涼やかに楽しめる逸品。エビなど色とりどりの具材と、選べるタレ(しょう油、ごま)が特徴の「五目冷やし麺」と合わせ、暑い季節には落ちがちな食欲を刺激してくれます。
提供期間:5月13日~8月31日(土)
料金:いずれも2970円
※毎週土曜掲載