illustration: Shogo Sekine

《東京#CODE》#無情熱大陸な 世代のトリセツ

コラム

 「いやさー、もー、情熱とかワクワクとかってわからないわー」。寒さがやっと和らいで、春の空気を感じ始めた日。某インフルエンサー男子と表参道でランチをしておりました。30代なりたての彼はミレニアル前期世代であります。とりとめのない会話の中で私が「最近何かワクワクしている?」と聞いたところからの流れです。「もうね、"無"なの、"無"!」。もともと冷静で、時々シニカルなことを話すおしゃれな男子ですが、彼の中で情熱といわれるような感情がないと。「だからもし『情熱大陸』にでてください、と依頼がきても、とにかく"無"だから情熱ポイントがないの」。確かに。彼の仕事はメディアにも取り上げられたり、パーティーにも呼ばれたり、華やかなシーンが多く、とても賑やかではありますが、彼自身は淡々と着実に仕事をするタイプ。だから彼曰く「情熱ない大陸」な日々なのだといいます。熱く語ったり、熱く仕事をする、つまり汗が出るようなことをせずに、淡々と仕事をこなす姿はとてもスマートです。そんな彼が最近学生の前で講演をすることがありました。今の20代はいわゆる「頑張れば報われる」とか、「がむしゃらに生きろ」的な根性話よりも、彼の「好きなことを仕事にする」という話に、真剣に耳を傾けてくれるといいます。

 私自身も20世紀を生きていますから、ときにどうしても根性論をしてしまいがちです。歯を食いしばって仕事をしているとき、頭の片隅であの葉加瀬太郎の曲が流れ出すことがあります。同世代にも「『情熱大陸』に出られたら本望!」みたいな男子がごろごろいます。頑張って生きているご褒美のように。この落差を見ると、やはり世代間のギャップは埋まらないなと思うのです。

 頑張らなくてもそこそこの生活をしてきた今の若い世代にとっては、先輩からむやみに怒られたり、寝る時間もなく働いたり、ましてや体を壊すまで仕事をすることに対する違和感が大きい。それに対して、彼らのロールモデルとして、好きなことをやっていて結果を出している人への憧れを感じるのでは。たとえば羽生結弦くんのようにすごい努力を重ねた人についても、その汗臭いところは一切見せずに、あのしなやかで美しいパフォーマンスを見せ、結果として金メダルを獲る姿に共感しているようです。上の世代から見ると「根性がない!」と言われがちですが、彼らなりの道具とネットワークとコスパ意識でやり遂げる力は、旧世代にはない魅力でもあります。

 4月、新入社員が会社にやってきます。彼らはほぼ羽生結弦世代です。「蒼い炎」と言われるように、見た目はクールでも、彼らなりの高い温度で仕事をしていることを先輩たちは見極めなくてはなりません。フルゆとり世代」でもある彼らは、ゆとりなりに自分たちのルールをつくっているのです。

 情熱を露骨に見せずにそれでも、自分のやりたいことを探っている世代には、彼ら目線で話すことが大切です。新しい世代を迎える先輩の皆様。社会のルールは教えても、自分たち世代のルールの押し付けはだめ。お互いが学べる上下関係ができれば理想ではないでしょうか?  

 もう葉加瀬太郎は聴こえなくても、彼らは彼らなりの新しい社会をつくっています。そして、2018年はリセットの年でもあります。新しい人とセンスを取り入れて、新しい時代を作りましょう!

THIS MONTH'S CODE

#あの葉加瀬太郎の曲

またはNHK「仕事の流儀」のスガシカオ。

#『蒼い炎』

羽生結弦くんの写真集。炎の温度は赤い部分より芯の青い部分の方が高い、というところからつけられた題名に納得。

#「フルゆとり世代」

今年入社する1995年生まれは、小学校入学から高校卒業まで12年間フルでゆとり教育を受けている最初で最後の世代。

#2018年はリセットの年

占星術や四柱推命でも今年はリセットの年であると言われている。



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