暑い毎日が続く夏の楽しみとして、日本人は背筋が凍るような怪談や幽霊話を大切にしてきました。そんなさまざまな物語に登場する妖怪を集めた珍しい展覧会「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」が8月28日まで東京・両国の東京都江戸東京博物館で開かれています。縄文時代の土偶から平安時代の地獄絵、室町時代に登場したさまざまな種類の「百鬼夜行絵巻」(ひゃっきやぎょうえまき)、そして現代の妖怪ウォッチに至るまで、時代ごとに日本人に親しまれてきた妖怪の姿を描いた128点を展示しています。中には、妖怪でありながらどこか情けなかったり間抜けでキモかわいく描かれているものもあり、笑いを誘います。
展示構成は、妖怪画が最も多彩な広がりを見せた江戸時代から始まり、次第に時代をさかのぼり、室町時代に妖怪画が流行する姿や、縄文人の不安や恐れを造形化したものとして土偶を紹介しています。

一口に「幽霊画」といってもさまざまなものがあります。大妖怪展ではたくさんの幽霊画を集めています
江戸時代の作品では葛飾北斎が晩年に描いたとされる「天狗図」や「狐狸図」(こりず)、北斎の弟子である高井鴻山(たかいこうざん)が考え出したと思われるオリジナリティーあふれる摩訶不思議な姿の妖怪図などは必見です。妖怪の姿がより広く江戸の世に浸透していったのは、浮世絵師が妖怪絵巻や幽霊画をたくさん描いたからではないかとされ、とくに北斎は「百物語」(原安三郎コレクション)で幽霊画に革新をもたらしたといわれます。

高井鴻山「妖怪図」江戸時代(19世紀)個人蔵 前期(7月5日~31日)展示
江戸の「妖怪絵巻」へとつながる、妖怪が造形化され始めた室町時代の作品では、土佐光信が描いたと伝えられる重要文化財「百鬼夜行絵巻」(京都・大徳寺真珠庵蔵)は注目すべき作品です。悪ふざけしているようにしか見えない赤鬼や青鬼、古い器物が変じた付喪神(つくものがみ)らがドタバタとさまざまな行状を繰り広げる様子は笑いを誘います。後世にも大きな影響を与えた作品です。
重要文化財 伝土佐光信「百鬼夜行絵巻」(部分) 室町時代(16世紀)京都・真珠庵蔵 ※後期(8月2日~28日)展示
さらに、平安時代末期から鎌倉時代に登場した地獄を描いた仏教絵画「地獄絵」には妖怪のルーツとなるであろうさまざまな異形のものが描かれています。国宝「辟邪絵 神虫」(へきじゃえ しんちゅう)(奈良国立博物館蔵)は、鬼を食らう神虫が大胆にちょっとユーモラスに描かれています。地獄や異界にうごめく鬼や得体の知れないものたちの姿は妖怪画誕生に大きな影響を与えました。

さて、平安時代の仏教画以前はどうだったのでしょうか?日本人の自然に対する恐れや畏敬の念を造形の中に探していくと、縄文時代の土偶にたどり着きます。ゴーグルをかけたような奇妙な「遮光器土偶」やみみずくに似ている「みみずく土偶」など異形の中に潜むユーモラスな表情に妖怪との共通点を見いだすことができます。
そして最後に縄文時代から4000年の時空を越えてタイムスリップして、現代の「妖怪ウォッチ」で展示を締めくくります。異形の中のおかしさという点では土偶と妖怪ウォッチが同類のように思えてきます。
展覧会を通して、いつの世も異形のものが人々の心を捉えていたことに気付かされます。さまざまな妖怪画の中から好みの一枚を探すのも楽しいですね。

頭にカッパの皿を乗せたようなユニークな「みみずく土偶」は現代の妖怪ウォッチに気脈を通じるようにも見えます

「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」は東京都墨田区横綱1-4-1の江戸東京博物館で、8月28日まで。午前9時30分~午後5時30分(土曜は午後7時30分まで、入館は閉館の30分前まで)。月曜休館(15日は開館)。
「大妖怪展」の詳細は公式サイトで