20世紀を代表する芸術家で、幅広い世代に人気のあるサルバドール・ダリ(1904~89)の油彩のほか、ドローイングやオブジェ、ジュエリー、書籍、映像など多彩な作品を集めた「ダリ展」が、港区六本木の国立新美術館で開催されています。
この展覧会は、日本では約10年ぶりとなるダリの本格的な回顧展で、ガラ=サルバドール・ダリ財団(スペイン)とサルバドール・ダリ美術館(アメリカ)、国立ソフィア王妃芸術センター(スペイン)という世界の主要なダリ・コレクションを中心に、国内所蔵の重要作品を加えた約250点を制作年代順に8章に分けて紹介しています。
第1章「初期作品(1904~22)」では、スペイン東部フィゲラスで生まれた10代のダリが印象派やポスト印象派の影響を受けて描いた作品などを展示。毎年、夏を過ごした港町カダケスの風景画には、この風景に対するダリの偏愛が表れています。第2章「モダニズムの探求(1922~29)」では、ダリがキュビズムやピュリスム、未来派など当時の前衛芸術の手法を使って制作した実験的な作品を見ることができます。第3章「シュルレアリスム時代(1929~38)」の冒頭では、サン・フェルナンド王立美術アカデミーの寮で親交を深めた映画監督 ルイス・ブニュエルと共同制作した短編映画「アンダルシアの犬」の一部を上映。この章では、私生活では将来の伴侶 ガラ・エリュアールと出会い、芸術面ではシュルレアリスム運動に参加したダリが現実を変容させ、転覆させるためのメカニズムであるパラノイア的=批判的方法に到達するため、自らの芸術を方向づけ、形成していった時代の作品が楽しめます。
第6章「ダリ的世界の拡張」では、1940年代の大半をアメリカで過ごしたダリが絵画制作と並行して取り組んだ演劇やダンス、映画のデザインなどを紹介。ウォルト・ディズニーと協働したアニメ「デスノート」(当時は未完成)のために描いた習作を基にして2003年に完成した7分間の作品も鑑賞できます。本展は、広島と長崎への原爆投下などに大きな影響を受けた時代の作品を展示する第7章「原子力時代の芸術(1945~50s)」へと続き、古典(伝統)へと回帰した時代の第8章「ポルト・リガトへの帰還―晩年の作品(1960s~80s)」で幕を閉じます。
グロテスクでスキャンダラスな作品で有名なダリですが、この展覧会では彼の多面的な世界を知ることができます。12月12日(月)まで。
《子ども、女への壮大な記念碑》 1929 年 140.0×81.0cm 国立ソフィア王妃芸術センター蔵Collection of the Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía, Madrid © Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.
.《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》 1945 年 66.5×86.5cm 国立ソフィア王妃芸術センター蔵 Collection of the Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía, Madrid © Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan, 2016.
ダリ展
会場:港区六本木7-22-2 国立新美術館 企画展示室1E
開館時間:午前10時~午後6時(金曜日は午後8時まで。ただし、10月21日(金)と22日(土)は午後10時まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
観覧料:一般1600円/大学生1200円/高校生800円/中学生以下は無料