常に時代を牽引し、音楽家の枠を超えてアートやファッション、文化に大きな影響とインスピレーションを与え続けた比類なきアーティスト、デヴィッド・ボウイの70回目の誕生日にあたる8日(日)、東京・天王洲アイルの寺田倉庫で大回顧展が始まります。50年におよぶ創作活動と生きざまを振り返るこの展示会のタイトルは「DAVID BOWIE is」。
イギリス・ロンドンにある芸術とデザインの殿堂「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館」(V&A)がキュレーションを行い、V&Aを皮切りにドイツやフランス、ブラジルなど9カ国を巡回して、約160万人がボウイの世界に触れました。アジアではボウイとゆかりの深い日本が唯一の開催国となります。

「STARMAN」の衣装とBBCの人気音楽番組「トップオブザトップス」の映像
展覧会は、「DAVID BOWIE is~」(デヴィッド・ボウイとは~)というフレーズでコーナー立てされ、ボウイというアーティストの美意識と多面的な魅力から、衣装をはじめ、写真、映像、手書きの歌詞、アルバムのアートワーク、楽器、私物など初公開の貴重なアイテムが300点以上展示されています。

まだデイヴィ・ジョーンズと名乗っていた若き日のデヴィッド・ボウイの貴重な映像
入場者にはヘッドホンが手渡され、ボウイの音楽やインタビュー音源などを聴きながら展示物を鑑賞することができる体験型の展示となっています。また、最後には四方に高く積み上げられた巨大モニターにボウイのライブ映像を映し出すコーナー「ショウ・モーメント」もあり、アイコニックなボウイの世界に存分に浸ることができます。

山本寛斎デザインの「アラジン・セイン」ツアーの衣装

また、会場には、大島渚が監督を務め1983年に公開された映画「戦場のメリークリスマス」でボウイと共演した坂本龍一、北野武の貴重な撮り下ろしインタビュー映像が上映されており、日本限定の展示だそうです。

会場では日本限定の展示として、「戦場のメリークリスマス」でボウイと共演した坂本龍一、北野武の撮り下ろしインタビュー映像が流されています

ボウイが描いた三島由紀夫の肖像画(左)など日本文化からインスピレーションを得て西洋と東洋を交錯させたボウイ

ボウイの創作活動の影響の源となったものを掘り下げるセクションの展示
一般公開に先がけて5日に行われたメディア向け内覧会には、V&Aのキュレーターのヴィクトリア・ブロークスさんとジェフリー・マーシュさんが登場し、キュレーターとしての思いや展覧会の見どころなどを語りました。

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のキュレーターのヴィクトリア・ブロークスさん(右から2人目)とジェフリー・マーシュさん(左から2人目)
2人によると、この展覧展の企画が立ち上がったのは2011年。そのころボウイは病気療養などのため長いこと公の場に姿を現わしていませんでした。そして、昨年1月10日に他界するのですが、それまでの間に突如新作を発表して音楽界に見事カムバックを果たし、われわれを驚かせ感動させました。ヴィクトリアさんは「まさに彼が生きた生涯を網羅し、みなさまとともに共有したいという思いでこの展覧会を作り上げました」と感慨深そうに話していました。

レコードジャケットなどの創作活動の展示
マーシュさんは、これまでの展覧会で気付いたことを3点揚げました。1つは、人生においてボウイの曲やパフォーマンスがリアルタイムで意味を持った世代にとって、いまだにボウイの存在が大きく心と記憶に残っていると認識したそうです。そして、直接知らない若い新たな世代がこの展覧会を通してボウイを発見していること。また、「自分の頭の中に入ってそこにある世界を見つけろ、そしてその中の夢を追え」というボウイからのメッセージが確実に伝わっていると感じたといいます。

アレキサンダー・マックイーンと共同でデザインしたコート。背景にはマックイーンからボウイに宛てた手紙が添えられています

ボウイのステージ衣装の数々
まだ日の目を見ない10代のころのデザインやスケッチなども展示されており、アーティストとしての形成のプロセスがわかるようになっています。
そして「展覧会の大きな見どころはデヴィッド・ボウイ自身の哲学」といいます。柔軟な物の考え方、常に違った生き方はないかと模索する探求心、異文化への興味や関心、そしてそれらを積極的に自身の生活に取り入れる姿勢―などを見てほしいと話しました。
さらに、ブロークスさんは注目すべき展示として、1974年に発表した自身のアルバム「ダイヤモンドの犬」の映画化をするために描いた映画化の絵コンテを揚げるとともに、ボウイが愛読していた書籍100冊のリストに注目してほしいと話していました。

DAVID BOWIE CAFEでは、ファイヤーキングのマグで飲み物を提供します

各国の展覧会で売り切れ続出だったボウイグッズ
スーパースター、デビッド・ボウイの一周忌に、ゆかりの深い日本を舞台に開かれる大回顧展で、あなたもボウイの世界に触れてみませんか。 (写真はすべて田中幸美)
◆「DAVID BOWIE is」は、東京都東品川2丁目6-10の「寺田倉庫 G1ビル」で、1月8日(日)~4月9日(日)。午前10時~午後8時(最終入場は午後7時、金は午後9時まで)。2月28日までのチケットを発売中、3月1日以降のチケットは13日(金)から発売。いずれも入場日時が指定されたチケットになる。大学生以上2200円(当日2400円)、中高生1000円(当日1200円)、小学生以下は無料。前売りは鑑賞日の前日まで発売。
詳しくは、http://davidbowieis.jp/