エゴン・シーレの作品50点を集めた展覧会が、1月26日(木)から東京都美術館で開催!
「新しい芸術家というのはごくわずかしかいない。
それは選ばれし者にほかならない」
─シーレによる新芸術集団の宣言より、1914年
28才でこの世を去った夭折の天才
下記の作品は、エゴン・シーレの自画像だ。絵のなかで彼は、頭を傾け、鑑賞者に視線を向けている。相手を挑発しているのか、訝しんでいるのか。あるいは、なにかに怯えているようにも見える。危うげで、緊張感をまとうこの男は、どんな画家だったのだろう?
シーレは、1890年にウィーン近郊のトゥルンという街で生まれた。幼い頃から絵の才能に目覚めるも、鉄道員の父親は、息子が画家となることを望まなかった。しかしそんな父親も、シーレが14才のときに病死。それが転機となり、シーレは絵を描くことに没頭していく。1906年には、16才で難関ウィーン美術アカデミーに同期最年少で入学。すでに美術界で名声を確立していたグスタフ・クリムトとも出会い、才能を認められる。1909年には、国際美術展への出品も果たし、独自の表現主義的画風は評価を得て、シーレは美術界を駆け上っていった。
同時に、彼の生涯は波乱に満ちたものでもあった。アカデミーは、伝統的な教育に満足できず退学。常識にとらわれない創作活動は、保守的な地域社会には理解されず逮捕されることもあった。そして、第一次世界大戦への召集。最期はスペイン風邪で28才という若さでこの世を去った。
本展は、そんなシーレのコレクションで知られるレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、油彩画、ドローイングなど、シーレ作品50点を展示。画家の生涯と作品を振り返っていく。時代の転換期に生まれ、タブーに挑み、パンデミックに倒れる。そんなシーレが描いた作品を見て、私たちはなにを感じるのだろうか。

エゴン・シーレ 《ほおずきの実のある自画像》
1912年 油彩、グワッシュ/板 レオポルド美術館蔵
《ほおずきの実のある自画像》は、シーレの自画像のなかでもっともよく知られた作品。青白い顔には赤、青、緑の絵具が、まるで血管のように、すばやい筆致で施され、高さの不揃いな人物の肩と、ほおずきの蔓がおりなす構図も、本作に緊張感を与えている。生涯にわたり自画像を描き続けたシーレは、世紀末のウィーンという多様な価値観が交錯し対立する世界に生きながら、自画像を通して自己のアイデンティティーを模索し続けた。

エゴン・シーレ 《母と子》
1912年 油彩/板 レオポルド美術館蔵

エゴン・シーレ 《頭を下げてひざまずく女》
1915年 鉛筆、グワッシュ/紙 レオポルド美術館蔵

アントン・ヨーゼフ・トルチカ 《エゴン・シーレの肖像写真》 1914年 写真 レオポルド家コレクション
エゴン・シーレ 1890-1918
20世紀初頭のウィーンで活躍した画家。わずか28年という短い生涯の間に鮮烈な表現主義的作品を残し、美術の歴史に名を刻む。最年少でウィーンの美術学校に入学も保守的な教育に満足できず、退学して新たな芸術集団を立ち上げる。当時の常識にとらわれない創作が社会の理解を得られずに逮捕されるなど、孤独と苦悩を抱えながら、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出した。
クリムトやゲルストルなど、
レオポルド美術館所蔵のウィーン美術の名作も!
レオポルド美術館は、ルドルフとエリザベス・レオポルド夫妻が約50年にわたり収集したコレクションをもとに、2001年に開館。19世紀後半から20世紀のオーストリア美術約6,000点の作品を所蔵。とくにクリムトなど世紀末ウィーンのコレクションが突出しており、220点以上のシーレ作品を所蔵し、「シーレの殿堂」としても知られる。本展では、クリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとするシーレの同時代作家たちの作品約70点も展示される。

リヒャルト・ゲルストル 《半裸の自画像》
1902/04年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵

グスタフ・クリムト 《シェーンブルン庭園風景》
1916年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館に寄託(個人蔵)
レオポルド美術館
エゴン・シーレ展
ウィーンが生んだ若き天才
会場:東京都美術館(上野公園)
会期:1月26日(木)〜4月9日(日)
開室:9:30〜17:30 閉室:月曜日
※金曜日は20時まで。入室は閉室の30分前まで
1月12日(木)10時より予約開始
日時指定予約制
一般/2200円
大学生・専門学校生/1300円
65歳以上/1500円
詳しくは公式サイトへ
https://www.egonschiele2023.jp