「みんなは みんなは きのめだよ はるに なれば はが でて はなが さく パッパッパッパッ」
平成2年に福音館書店から刊行された『ふゆめがっしょうだん』(冨成忠夫、茂木透・写真、長新太・文)を読むと、寒さに耐えて春の訪れを心待ちにしている木の芽たちの声が聴こえてきます。
この絵本は、身近に見られる木の芽の冬姿を、カメラで拡大して写しています。そこには、動物の顔や帽子をかぶった子供のような顔など、目や口のようなさまざまな模様が見えます。
絵本の最後のページに書かれた説明によると、顔に見えるところは落葉した葉の柄がついていた跡で、これは葉に養分を送っていた管の断面だそうです。この顔の上にある円形や円錐(えんすい)形をした部分が冬芽で、この中にこれから葉や花になるものが小さくたたまれていて、春を待っているのだそうです。
冬芽の表情は一つ一つ皆違います。
私が幼稚園に勤務していたとき、この本を手にした子供たちは、絵本の中の冬芽の一つ一つの表情をじっくりと見つめて面白がったり、不思議がったりしました。そして、今度は自分たちで冬芽を探し出しました。

4歳児のナオちゃんは、本と同じ冬芽を見つけると「あった! あった! きのめさん、こんにちは」と挨拶をしました。そこでは、これまでとは違う木との新たな出合いが生まれます。
ケン君が「みんなは みんなは きのめだよ はるに なれば もっと きれいに なるんだよ パッパッパッパッ」と、繰り返し読んで覚えた本の言葉を言い始めると、それは周りの子供へと広がって、声が重なり「こどもがっしょうだん」になりました。
そのうち、「はるになれば ねんちょうぐみ(年長組)になるんだよ パッパッパッパッ」「はるになれば 〇〇になるんだよ…」と言葉を代えて楽しむようになりました。そこには、自分自身や仲間の成長への喜びや希望があります。
写真に添えられた長新太さんの言葉は優しく、のびやかです。
「たいようも かぜも すてきねえと ニコニコするよ パッパッパッパッ みんなは みんなは きのめだよ きのめだよ」
春はもうすぐ。(国立音楽大教授 林浩子)
