©Yuriko Yamawaki

【絵本に再び出会う】子供の選書に寄り添う

, コラム

 先日、休日に地域の図書館に行ったときのことです。おじいさんと4、5歳の男の子がやってきました。児童書コーナーの入り口で、「今日は5冊な」とおじいさんが男の子に言いました。しばらくして、それぞれが5冊ずつ選んだ本を閲覧席のテーブルの上に別々に重ねて置いてから2人はじゃんけんをして、勝った方の選んだ本から交互に読み始めました。

 男の子が選んだ5冊は昆虫の本と図鑑でした。男の子が得意になって説明する昆虫の名前や生態に、おじいさんは「ほぉ~」と驚いたり、新たな情報を伝えたりします。一方、おじいさんは月の本、物語絵本、昔話とさまざまなジャンルを選んでいました。男の子はじっと聞き入ります。

 子供が選ぶ本をみると、その子の興味、関心や嗜好(しこう)を読み取ることができます。

 幼稚園に勤務していた頃、クラスの皆で絵本を読む時間に、仲間から乱暴と怖がられていた子供が「先生、これ読んで」と絵本を差し出しました。それは、心温まる優しいストーリーでした。別の日、人見知りでおとなしい子供が冒険や勇ましいストーリーの絵本を選びました。そこには、「こうありたい」という子供の願いがあるのではないでしょうか。子供が選ぶ絵本から、一人一人の新たな一面が見えてくることに気付かされました。それは、私だけでなく子供同士でも感じていました。それ以来、私は子供自身が絵本を選ぶことを大切にしています。

 一方で以前、大人の女性が昆虫などの絵本を選びたがらない例を紹介しましたが、大人が子供に向けて絵本を選ぶとき、自身の嗜好が影響しがちです。しかし大人が考えている以上に、子供は世界を知りたい、分かりたいと思っています。だからこそ、私たち大人は自身の嗜好に偏ることなく、子供への願いや、ときには祈りを込めたさまざまな絵本を選び、子供の世界を広げていきたいものです。

 「おじいちゃんの絵本も面白かった! 次は10冊、ううん、100冊だよ!」「え~100冊かよ!」

 互いに笑い合う姿に、私までもが思わずほほ笑んでしまいました。(国立音楽大教授 林浩子)


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