画面いっぱいに色が溢れている。光のなか、音楽にあわせて踊る少女たち。手を取り合い、笑い、自分たちだけの小さなお城でキスをする。まるで夢の国のような幻想的な世界を漂いながら、それでも少女たちは、本物の夢を、確固とした未来を探し求める。
物語はじつに古典的。二人の少女は一目で惹かれあうが、互いの親は敵同士で、友人にも家族にもその恋は秘密にしなければいけない。まるでロミオとジュリエットのような恋物語。なかでも彼女たちをもっとも苦しめるのは、同性愛=禁じられた恋であるという周囲の偏見だ。今も同性愛が犯罪とされることもあるケニア本国では、この映画も、1週間の限定上映しか許可されなかったという。撮影中も、作品が完成した今も、私たちは根深い偏見と闘い続けています」という監督の言葉通り、この作品を古典的メロドラマとしてつくらなければいけなかった現実が、たしかに存在しているのだ。
スケボーに乗り、男友達とサッカーをするケナは、手堅い職業として看護師を目指している。だが彼女は、自分の本当の夢も、性的指向も、家族や友人たちに話すことはできない。どこか内気そうな瞳は、いつも周囲をキョロキョロと見回している。だからこそ、カラフルな髪の毛を揺らし自由奔放に街を闊歩するジキと出会い、彼女はたちまち恋に落ちる。
そういえば、ドイツから亡命し50年代のハリウッドで活躍した映画監督ダグラス・サークは、ロドラマの基本構造について、「動じない役柄と引き裂かれた役柄を置くこと」だと語っていた。『ラフィキ』で、社会生活と恋愛との間で引き裂かれるのはケナ。ジキは周囲の冷たい視線にも動じず、もっと自由に生きればいいとケナの背中を押し続ける。
けれどメロドラマの構造は、残酷な現実を前に崩壊する。ジキもまた、結局は籠の中に閉じ込められた鳥でしかないからだ。まっすぐな彼女の瞳が輝きを失うとき、映画もまた色を失ってしまう。あれほど光に溢れていた画面に暗い影がぴたりと張り付き、その落差に心を乱される。
映画は、またあの光と色を取り戻すことができるのか。私たち観客は、息を殺して画面を見つめ続けることになる。そうして、ひとすじの光が射してくる。

ケナ役のサマンサはドラマーでアーティスト、ジキ役のシェイラは新進の映画監督として活躍中。
This Month Movie『ラフィキ:ふたりの夢』
ケニアの首都ナイロビ。両親が離婚し、母と二人で暮らす少女ケナは、ある日自由奔放な少女ジキと出会う。それぞれの父親は、目前に迫る国会議員選挙での対立候補。対立するはずの二人は、すぐに惹かれあう。だが古い慣習と同性愛への偏見がはびこる街で、彼女たちの恋は決して表沙汰にするわけにはいかなかった…。ケニア出身の女性監督がつくり上げた、カラフルでせつない少女たちのラブストーリー。
シアター・イメージフォーラムほかにて公開中。
監督:ワヌリ・カヒウ
出演:サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ
旧作もcheck!
『天が許し給うすべて』
二人の子を持つ未亡人のキャリーと庭師の青年ロンの身分違いの恋を、色彩溢れる映像で描いた1955年製作の傑作メロドラマ。

©1955 Universal Pictures Co. Inc. RENEWED 1983 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
監督:ダグラス・サーク
Blu-ray:4800円
DVD:3800円
発売元:株式会社アイ・ヴィー・シー