女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来に繋げる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
女性のQOLを上げる
フェムケアプロジェクト始動!
フェムテックは生物学的な分類で女性を意味する「female」と「technology」を組み合わせた造語です。今年6月、メトロポリターナで『まずは知りたいフェムテック』というタイトルの特集をしたところ、予想以上の反響がありました。経済産業省によると、女性の月経随伴症状などによる経済損失は年間6828億円。女性の健康や働き方に関わる問題は、性別問わずすべての人に関わる社会課題です。そこでメトロポリターナでは、女性の健康や心と身体の「ケア」について考える「フェムケアプロジェクト」を立ち上げました。その活動のひとつとして、読者のみなさんとともに、さまざまな専門家や、最前線を走るトップランナーなどにお話しを聞く「Femals Talk」=「FemTalk」という連載をはじめます。第一回は、一般社団法人女性の健康推進協会「ジョセケン」代表理事の濵脇文子さんに話を聞いてきました。
助産師は女性の健康のスペシャリスト
昨年設立された「ジョセケン」は助産師さんが集まる協会です。その目的はずばり女性の健康を推進すること。助産師さんといえば、妊娠しなければお世話になることもないと私は思っていたのですが、実はそうではないと濵脇さんは言います。
「助産師は英語で“Midwife”。“Mid”はラテン語で“with”を意味する言葉です。つまり、助産師とは”女性とともに”歩むお仕事。お産に限らず女性の一生を『ケア』するのが本来の役割です。医師は主に、診断し治療を行う人ですが、助産師は子どもへの性教育もするし、更年期や老年期の身体の変化もサポートします。女性の生涯における生理的変化と悩みに寄り添い、保護指導などを行う存在です」
資格を得るためには看護師免許も必要で、現在日本には約4万人の助産師さんがいるとのこと。女性しか就けない唯一の職業というのも驚きでした。
「ちょっとした身体の不調に気づいても、スケジュールを調整して病院に行くことは、忙しい女性にとって大変ですよね。だったら私たちのほうから出向こうと思い、ジョセケンでは企業を訪ねてセミナーを開催し、女性の健康を促進する活動をしています。『呼ばれてないけど来ました!』ってよく言っているんです(笑)。現代の女性が持つさまざまな悩みや課題に対応できるよう、助産師同士が情報共有できるコミュニティづくりなども行っています」
フェムテックもフェムケアも
健康になるための手段のひとつ
助産師さんの存在を知り、とても心強く感じた社会人10年目の私ですが、30代半ばに差し掛かり、いままであまり気にしたことのなかった自身の健康や仕事と私生活のバランスなどについて考える機会も増えてきました。しかし、いざ自分の身体を大切にしようと思っても何から始めればいいのかわからず、先送りに。果たしてまだ間に合うのか…。いま抱えているそんな葛藤を小声で打ち明けてみると、濵脇さんは「それが当然ですよ!」と笑顔で答えてくれました。
「あきらかな不調がなければ、人間はなかなか行動にうつしません。だから、なんとなく漠然とした不安を抱えたままの女性のほうが大多数です。でももし、将来に備えてなにかをしたいと思うのなら、まずは、自分にとって何が幸せであり、どう生きたいかといったことを考えることから始めてみてください。そうすれば自ずと、その生き方を実現するために、何をするべきかもわかってきます。忘れてはならないのは、健康はあくまでも、夢を実現するための手段ということ。フェムテックもフェムケアも、女性自身が快適でありたいという希望や、課題や悩みを解決しようという人の想いから生まれてきた“手段”なのです」
月経は身体の通知表
自分の身体を知るいいきっかけに
濵脇さんは、もうひとつ大事なことを教えてくれました。
「世の中には、たくさんの情報があふれています。しかし、人の身体は一人ひとり異なります。誰かが薦めている商品だからとしても、それが自分の身体にとっても有効かはわからない。だから、自分の身体について知っておくことも大切です。たとえば月経は、身体の調子を教えてくれる通知表のようなものです。無理な生活をしていれば不調のサインがあるはずですし、自分の身体と対話するいいきっかけになってくれるはずです。自分自身が自分の身体のいちばんの専門家として、自信を持って味方になってあげてください。もちろん、思春期や、更年期など、ライフステージの変化期は、すごく大変なことが多いです。そんなときは私たちのような助産師や周囲の人を頼ってくださいね」
心と身体の「ケア」は、自分自身との対話から始まるということ。今回、濵脇さんとの「FemTalk」を通じ、少し肩の力が抜けたような気がします。自分のペースでいい、不調のときこそ、心と身体に向き合うチャンス。私の心はどこに行きたいのだろう? 私の身体は、なにが好きなのだろう? まずは対話し知るところから。そうやって、少しずつ、楽しみながら、年を重ねられたら、なんだか素敵な未来につながるような気がしました。
《INTERVIEWEE》
女性が健康なことが、社会全体の健康や幸福に寄与できるはず!
〈about〉ジョセケン
2020年に設立された一般社団法人女性の健康推進協会(ジョセケン)が掲げるミッションは、「女性たちの心身や環境を想像(ソウゾウ)し、より良い健康を創造(ソウゾウ)する」こと。ジョセケンには、約300名の助産師が所属し、妊娠・出産・子育て支援のみならず、女性の生涯の健康の支援者として、働き方などを新しく見つめ直し、現代女性に寄り添いながらサポートすべく企業でのセミナー開催や、SNSでの発信などを行っている。
https://wha.jp.net/joseken
一般社団法人女性の健康推進協会(ジョセケン)
代表理事 濵脇文子
助産師・看護師・保健師資格を持ち、ジョセケンの初代代表理事に就任。現在、お産や子育ての喜怒哀楽を、楽しく伝えるべく「お産楽語」にもチャレンジ中

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
10月からメトロポリターナ新編集長として就任。風邪を引かないのが強みだが、自身の身体のケアには少しウトイ自覚あり。
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。