Tex&Photography=KOSUKE KOBAYASHI

【国際男性デー特別企画】ココロもカラダもパワーチャージ!ぼくたちはどう旅するか?


 11月19日は「国際男性デー」。 男性の健康や幸福、ジェンダー平等の実現を目指し、1999年にはじまった記念日だ。その目的のひとつに男性の心身の健康がある。健やかでいることは「自分らしさ」を支える大切な要素。「最近は活力がなくなってきた」「もっとアクティブになりたい!」と感じているなら思い切って大自然に飛び出してみよう。


大自然へのいざない。

 パソコンと向き合う日々。ささやかな休憩時間もついスマートフォンを開いてしまい、気づけば画面ばかり眺めて過ごしている。頭ばかり疲れてしまって、週末の休みもやる気が出ない。身体を動かしたいと思っても、どうしていいかわからない。そんな負のスパイラルに陥っている人は少なくないだろう。

 マズいな、と感じたのであれば変えるべし。小さなことからでもアクションを起こしてみよう。

 そこでご提案したいのが「ハイキング」。山や森を歩き、自然を感じる。体を動かし、汗をかく。季節の移ろいにも触れられるアクティビティだ。ハードルが高いと感じる方もいるかもしれないが、とってもシンプル。基本は「歩く」ことだ。日本には各地に山があり、国土の7割以上を山林が占める森の国。身近なところにもサクッとハイキングを楽しめるロケーションがたくさんある。デジタルデトックスという言葉を聞いたことがあるはず。ハイキングをキッカケに大自然へ飛び出し、ネット世界の渦から抜け出してみてはいかがだろうか。

新しい遊びをはじめてみる。

 「山道具や服なんてないけれど」と、踏みとどまってしまうかもしれない。でも大丈夫。動きやすい服とスニーカーがあれば十分。最近はファストファッションでも、スポーツウェアやアウトドアウェアが手に入る。もちろん本格的な装備を揃えるのがベターだが、トライしてみることが大事。

 おすすめは、標高1000m以下の低山と呼ばれる山。御岳山(東京)、金時山(神奈川)、日和田山(埼玉)あたりが人気の山。首都圏から日帰りで行くことができ、眺望もバッチリ。しっかり登りごたえがあるので、心地よい疲労感と達成感を得られる。

 舗装されていない道=トレイルを歩くのは楽しいもの。身体を動かすことはもちろん、五感で自然を感じることによる適度な刺激が心を満たしてくれるだろう。

ホルモンの活性化が心身を強くする。

 ハイキングが心身の健康に与える効果には科学的な裏付けがある。その指標のひとつが、テストステロンというホルモンだ。男性医学の専門家である井手久満先生によると、筋肉や骨格を作り上げる働きがあり、まさに「男性らしさ」を支えるホルモンとのこと。ちなみに女性の体内にも存在しており、その知識をもつことは、家族やパートナー、同僚など周囲の理解にもつながる。このテストステロンだが、加齢とともに分泌量が減っていくといわれており、「筋肉が落ちたな」「太ってきたかも」「若々しさがなくなってきた」という方は、ひょっとしたらテストステロンの減少によるものかもしれないのだ。

 でもご安心を。テストステロンの分泌は、身体を動かすことで促されるそうだ。さらに運動と十分な睡眠を繰り返すことで、ホルモンの分泌量が増加し、ポジティブなサイクルが生まれていく。もちろんフィットネスジムでの運動でもテストステロンは分泌されるが、適度な刺激や達成感も大きな役割を持っている。自然に身を置くことによるリフレッシュ効果に加え、「山を歩ききった」「登頂した」という実績は、たとえ小さなものであっても大きな変化につながっていく。自然という新しいフィールドを体感することで、好奇心が高まり、感性が研ぎ澄まされる。旅にはこんな効用もあるのだ。軽い気持ちではじめたハイキングが、いつしか生きがいになっている、という方も少なくない。

 春がくるころには、体つきが変わり、気分も晴れやか。身近な友人や知人に「最近笑顔が増えて、元気そうだね」と言われたら完璧だ。もしその友人が少しでも興味をもっていそうであれば、次の週末にでもハイキングに誘ってみてほしい。切磋琢磨できる仲間が増えることで、楽しみの幅も広がっていく。ちなみに、コミュニケーションもテストステロンの分泌を増やしてくれるのだそうだ。

 心身の健康を保つことは、日々の活力を支え、自分らしさをかたちづくる大切な要素。仕事はもちろん、プライベートの充実にもつながっていく。

 これからのシーズン、涼しく過ごしやすい秋はハイキングにぴったり。身体を動かしリフレッシュしたあとは、おいしいご飯を食べて、温泉に入る。最高な週末を想像するだけで楽しくなってくるのではないだろうか。


自然を駆ける爽快感
マウンテンバイク

 自転車は身近な乗り物のひとつだが、スポーツ要素が高い乗り物でもある。アクティビティとして楽しむのであれば、マウンテンバイクがオススメ。オフロードでの走破性を備えたモデルは山道や林道などでも安心して乗りこなすことが可能。アップダウンの多い場所であれば、高い負荷をかけてワークアウト的に楽しめる。

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指先の神経に集中
ボルダリング

 東京五輪ではじめて正式種目に採用されたスポーツクライミング。岩を道具を使わずに自分の身体のみで登る、シンプルでありながら奥の深いアクティビティだ。楽しむ秘訣は、体を保持する筋力やムーブと呼ばれる身のこなしを身につけること。室内ジムも多くあるので、仕事終わりのフィットネス代わりにも◎。

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水面から見る景色
カヤック&SUP

 ぷかぷかと漂う、水上ならではの浮遊感と開放感がカヤックやSUP(Stand Up Paddle)の醍醐味。湖や川の真ん中から、陸地を眺める視界も新鮮で刺激的。しかし、全身を使うスポーツでもあり、水を漕ぐパドリングでは腕力だけでなく背筋もフル稼働。不安定なボード上に立つSUPでは体幹やバランス感覚も必須。

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自然の気温を感じる
アウトドアサウナ

 サウナ好きなら、いつかは挑戦したい大自然での水風呂や外気浴。近年は本場フィンランドさながらのサウナ施設も増えてきており、手軽に楽しむことができる。アウトドアアクティビティと組み合わせ、リフレッシュタイムにするのもいい。大自然を目の前にととのえば、日々のストレスも解消されるはず。

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旅と健康は
どうカンケイする?

 泌尿器科医として男性ホルモンである「テストステロン」の働きを研究してきました。テストステロンは人間が生きていくうえで必要な基本的なホルモンですが、知っておいてほしいのは、人間の「やる気」にもかかわること。働き盛りの男性にとって、非常に重要なホルモンです。ただ加齢や取り巻く環境から生じるストレスによって分泌が急激に低下することがあり、そこから男性更年期障害を発症することもあります。

 要するにストレスを発散することは男性医学の観点からも重要だということです。旅は、男性ホルモンの分泌の低下を防ぐ効果があるといえるでしょう。
まず試してほしいのが日光を浴びること。テストステロンの分泌にはビタミンDが必要となりますが、ビタミンDは日光を浴びることで体内で活性化されます。筋肉を鍛えることもテストステロンの分泌を増やすことにつながります。全身を動かすアクティビティはおすすめです。

 難しく考えなくても、仕事から離れ、気分転換すること自体が健康につながるのです。
 

お話を聞いたのは……
井手久満氏
順天堂大学大学院医学研究科
泌尿器科学健康長寿医学講座 特任教授

1967年生まれ。宮崎大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本メンズヘルス医学会・日本抗加齢医学会副理事長。前立腺癌を中心とした泌尿器腫瘍学・ロボット支援手術が専門。男性更年期障害など男性医学にも精通し、AIやバイオマーカー研究に取り組んでいる。





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