text: Sayoko Kusaka photo: Shigeo Kosaka edit: Kohei Nishihara(EATer)

“共通言語”を広げるということ[フェムトーク]


女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。


 12月。今年の締めにひとつある〝認定資格〟を受けてみてはどうだろうか。日本フェムテック協会が行う「フェムテック認定資格」は、15問のWEBテスト形式で、だれでもすぐにワンクリックからスタートできる。すでに4万人近くが取得しており、企業研修にも取り入れられるほど。この認定資格、実は、代表理事の山田奈央子さんと関口由紀さんのある共通の想いから生まれている。それぞれ起業家と医師といったバックグラウンドの違う二人に、認定資格の真の目的や今後について聞いた。

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日本フェムテック協会代表理事
株式会社シルキースタイル 代表取締役
山田奈央子

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日本フェムテック協会 代表理事
女性医療クリニックLUNAグループ理事長
女性泌尿器科医師
関口由紀

 

想いがつながり生まれた事業

 きっかけは、山田さん自身が患った女性疾患だった。「これまで、女性特有のお悩みに寄り添ったモノづくりを続けてきました。その過程で、日本女性のヘルスリテラシーの低さに危機感を感じていたのですが、2021年に私自身が女性疾患を患って、自分のリテラシーの低さを目の当たりにしたんです。その後周囲に話をしていくと、実は自分も子宮や卵巣を失ったよ、とか、痛みを我慢して騙し騙し仕事を続けているよ、といった人が結構多くて。女性特有の健康問題って、こんなに語られていないんだと思いました。これからの時代は、働く女性も一層増えるからこそ、リテラシーを高める機会が必要と考え、当時会社をサポートしてくれていたキャリアコンサルタントの市川美和さんにまず相談してみて。そこから、医療ジャーナリストの増田美加さん、医師の関口さんにたどりつきました。みんな、同じ問題意識をもっていて。だからすぐに力になってくださいました」。2021年、共通の想いがバトンのようにつながり、日本フェムテック協会が誕生した。

 関口さんは、この二年で社会の「フェムテック」という言葉の捉え方に変化を感じているという。「従来の『フェムテック』という言葉の意味は、技術に限っていましたが、最近では『思想』に変わってより大きな概念に変化していると思います。私は、女性泌尿器科が専門で、高齢の女性医療に携わることが多い。昔に比べると、更年期という言葉もだいぶメディアを通じて広がってきた感覚で。ある意味一大ムーブメントになってきていると感じていますし、協会の努力も少しずつ寄与できているんじゃないかと思います」

男女問わずお互いが気遣える
風土づくりの一歩に

 設問づくりで大切にしたことは、女性だけの問題に留めないということ。山田さんは認定資格の狙いについて「相互理解とウェルビーイングな社会を目指して、みんながフェムテックを身近に感じること。女性の健康課題について女性はもちろんのこと、男性にも気楽に知ってほしいと考えました。また、女性のなかでも年代によってはあまり認識されていない言葉もあるので、全体の問題を網羅できるように設計しています」

 「まずは概念を広げるというところが目的です。一回は落ちても、すぐに再チャレンジして、二度目、三度目で合格に。認定書をその場でもらえるので、ゲーム感覚で楽しんでもらうことで、広がっていくことを意識しています。先日は福井県の高浜町の町長さんにイベント前日に受験してもらったりして、セミナーやイベントでも活用しています。就職前の学生にも、社会人の必須知識として知ってもらいたいのはもちろん、時代的な背景から積極的に知る機会が少なかった40、50代の女性には特に受けていただきたいです。人生100年時代。残り数十年の人生で、自分の健康を人任せにはできないですからね」

 今年からは、企業に対して、従業員が一定の割合3級を受験し合格すると「フェムテックアンバサダー・カンパニー」に認定する仕組みも生まれた。「共通言語をつくる、というのが大事だと思っています。チームや組織で最低限の共通認識があると、コミュニケーションが取りやすくなる。社内の言いやすい雰囲気、お互いを気遣える風土づくりの第一歩として活用いただきたいです」(山田さん)

 「共通言語を広げる」といった使命と世の中の必要性から生まれた“フェムテック認定資格”。今後はコミュニティ化なども考えている。まずはゲーム感覚で、自分の現在地を知るところからはじめてみてほしい。お二人の話から、そこから生まれる会話もまた、大切な一歩につながる気がした。


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3級に合格すればその場で「フェムテックアンバサダー」として認定され、認定書がもらえる。今年12月からは、既に取得している人に対するアップデート研修も予定している。最近では、個人に限らず、企業研修の一環などでも取り入れられるなど幅広く活用されている。

認定資格3級へのチャレンジはこちらから!
https://j-femtech.com/femcare-l/certificate/l3/metropolitana


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メトロポリターナ編集長
日下紗代子

2024年は1級取得を目指すぞ!

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Fem Care Project

「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。





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