「百鬼夜行絵巻」をテーマに制作した約100体の妖怪が妖しいあかりに照らし出されます

《目黒》浮かび上がる100体の妖怪、巨大なねぶた…百段階段がつなぐ日本の夏

おでかけ, アート

 日本ならではの〝和のあかりと色彩〟を一堂に集めた「アートイルミネーション『和のあかり×百段階段 2016』展」が8月28日(日)まで、東京・目黒の目黒雅叙園で開催されています。昨年に続き2回目の開催で、墨絵アーティスト、西元祐貴さんが福井の名産品「越前和紙」に描いた龍をほのかなあかりで照らしたモノトーンの空間や、青森ねぶた祭のねぶた師がこの展示のために制作した巨大ねぶたの迫力ある部屋など、「祭り」「職人」「アート」「伝統芸能」の4つのジャンルの約100点を楽しむことができます。
 会場となっているのは通称「百段階段」。1935(昭和10)年に建てられた目黒雅叙園3号館のことで、雅叙園に現存する唯一の木造建築です。2009年に東京都の有形文化財に指定されました。通称とは異なる99段の長い階段廊下がまっすぐに続き、昭和初期を代表する126枚の日本絵画に囲まれた7つの趣向の異なる部屋が階段によってつながれています。今回の展示は、これら日本絵画をそのままに、各部屋を個性的に和のあかりで演出しています。

まっすぐに続く百段階段。この階段の右側に7つの部屋があります


「百段階段」と称しながらも、実際は99段しかありません



墨絵アーティスト、西元祐貴さんの龍をほのかなあかりで照らしたモノトーンの空間


ベテランねぶた師の内山龍星さんらがこの展示のために制作した巨大ねぶた


 水干絵の具(すいひえのぐ)を使った独特のタッチで新しい日本画を切り開く日本画家の満尾洋之さんは、日本に昔から伝わる「百鬼夜行絵巻」(ひゃっきやぎょうえまき)をテーマに約100体の妖怪を制作しました。雅叙園に迷い込んだ1匹の猫が、立体絵巻の中でだんだんと変身を遂げていく様子を表現しています。
 切り絵作家の早川鉄兵さんは、創作活動の拠点とする滋賀県米原市の里山をイメージした自然や動物をテーマに制作。天井からつるした切り絵にほのかなあかりがあたると影絵ができて幻想的な雰囲気を醸し出します。

「百鬼夜行絵巻」をテーマに約100体の妖怪を制作した日本画家の満尾洋之さん


切り絵作家の早川鉄兵さんは、滋賀県米原市の里山をイメージした自然や動物をテーマに制作しました



 また、今年は99段目の階段の突き当たりにある部屋も初公開されています。昔、雅叙園には「百人風呂」といわれる大きな浴室があったことや、雅叙園の創業者が銭湯を経営していたことなどから、銭湯の世界を復活させました。日本に3人しかいない銭湯絵師の中で唯一の女性絵師、田中みずきさんが銭湯のある街のあかりを湯船に照らし重ねるイメージで制作したそうです。「銭湯絵 目黒の湯」というタイトルで、青い空と白い雲、水辺と大きな富士山という伝統的な銭湯絵を描いています。
 ちなみに、百段階段なのになぜ99段かというと、奇数は陽数で縁起がいい数であることや、100というきりのいい完璧な状態は長く続かないという考えからあえて1つ引いて99として、〝未完の美学〟を表現したなどの説があります。

日本で唯一の女性銭湯絵師、田中みずきさんが制作した「目黒の湯」


 このほか、正面玄関には山口県柳井市の柳井金魚ちょうちんや、パブリックスペースの大門池では「秋田竿燈まつり」の竿燈をはじめ、青森県五所川原市の「五所川原立佞武多(ごしょがわらたちねぷた)のねぷたなどが飾られ、全国の祭りを一度に楽しめます。
 夏休みのひととき、貴重な有形文化財を彩る和のあかりの世界にひたってみませんか。

「秋田竿燈まつり」の竿燈



「五所川原立佞武多」のたちねぷた


正面玄関に飾られた山口県柳井市の「金魚ちょうちん」



 ◆「和のあかり×百段階段展 2016」は、東京都目黒区下目黒1-8-1の目黒雅叙園百段階段で8月28日(日)まで。日曜〜木曜は、午前10時〜午後6時(最終入館午後5時30分)、金・土曜は午前10時~午後7時(最終入館午後6時30分)
詳しくは公式ホームページで  http://www.megurogajoen.co.jp/event/wanoakari/



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