『静かに、ねぇ、静かに』著:本谷有希子 1400円 講談社 『90年代のこと 僕の修業時代』 著:堀部篤史 1600円 夏葉社

SNSとの付き合イカたを、考えてみた《いか文庫 本日は閉店なり》


店主(以下 店):もしもーし。バイトちゃーん。わ! 半袖着てる!

バイトちゃん(以下 バ):シンチャオ、店主!こちらベトナムは暑くて暑くて。毎日スイカやマンゴーを食べています!

店:物価も安いんでしょ?

バ:日本の5分の1くらいです。

店:ひえ〜!いいなぁ。

バ:あと、こちらに来て驚いたのは、みんなSNSをやっていること! 街中でキメ顔をして自撮りをする若者がいっぱいいます(笑)。

店:それはちょっと意外だね。

バ:まだまだ私も観光客気分なので、出かけるたびに写真を撮ってSNSにアップしよう!と思うんですけど…。でも、この前SNSを題材にした本谷有希子さんの短編集『静かに、ねぇ、静かに』を読んだら、背筋がぞっとして。

店:ぞっとするの?

バ:1つ目の短編の舞台がマレーシアで、今の私の生活環境と重なる部分もあって。街並みを撮ろうとして、無意識にそこで生活している人の邪魔をしていたり、目の前の景色よりもスマートフォン越しの景色に満足してしまったり…。SNSにハマった主人公たちが最終的にどうなるのかは読者の想像に委ねられているのですが、なんだか後味が悪いんです。

店:読みたいような、読みたくないような…。

バ:とはいえ、海外ではSNSの写真を見せるだけで相手に考えを伝えられたり、便利なこともたくさんあるので、うまく使っていきたいなぁと。

店:そうだね。私も京都の本屋、誠光社の店主さんが書いた『90年代のこと』を読んで、SNSについて考えてたんだ。インターネットがいまほど普及していなかったころは、どんなふうに情報を得ていたんだっけ?ってことから始まり、自身の90年代を振り返っていく本なんだけどね。いまは、SNSであらゆる情報が流れてくるじゃない?

バ:本当にたくさん…。

店:私は高校生のころ、CDショップに通うのが好きで、試聴したり店で流れてる曲を店員さんに尋ねて情報を得ていたの。ほかにも雑誌で調べたり、テレビやラジオで録って何回も楽しみ直したり。手間がかかる作業だったけど、自分の好きなものを見つけたときは、出合うべくして出合った感じがして、楽しかったんだ。

バ:いまは検索すれば一発で欲しい情報が手に入りますもんね。探す手間を省ける分、吸収する時間は増えたのかな。

店:どっちが良いとか悪いとか、言えないよね。いか文庫はSNSも活用しつつ、本のようなアナログなものを扱う店として、うまく楽しくやっていきたいね。

バ:私もゆくゆくはベトナム語で、本やイカの情報をSNSに投稿したいです。それでは、また電話しますね。ヘンガップライ!






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