知っているようで知らない、体のこと。なかでも「生理」は女性にしか訪れないから、ジェンダーギャップを生み出す大きな原因のひとつ。悩みがない人もいるだろうし、口にすること自体、タブーと思っている人もいるだろう。だからこそ、「あれ?」と感じたときに自分にも、誰かにも、ちょっとしたケアができるように。いま知っておこう、生理の基本。
昨年6月、メトロポリターナで取り上げた「フェムテック」。女性の健康課題を解決していくテクノロジーを指すこの言葉を通じて、妊娠、出産、更年期など、女性にはライフステージによってさまざまな悩みや不安があることがあらためてわかってきた。なかでも「生理」は、多くの女性にとっては当たり前のことだけれど、女性同士でも人によっては話題に上る機会も少ない。
一般的に10代~50代の女性に毎月訪れる「生理」は、体と心にさまざまな作用を及ぼしている。2019年の経済産業省の発表によると、女性の月経随伴症状などによる社会経済的損失は年間6828億円という試算もあり(*)、いまや社会全体で向き合うべき課題となっている。そして、その解決には、女性自身はもちろん、女性同士や男性も含めた周囲の人からの理解やサポートが欠かせない。男女の相互理解が、課題解決の鍵といえるのではないだろうか。
メトロポリターナを発行する産経新聞社は、昨年10月に「フェムケアプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトの目的は、女性特有の健康課題や働き方などに関する情報発信を通じて、心と体のケアについて性別を超えた相互理解を目指すこと。そのプロジェクトのひとつとして、今月号では、「生理」について、基礎的なことから考えてみた。これからの社会が「生理」とどう向き合っていくか。自分自身としてはもちろん、パートナーや家族、友人に、どんなケアをしていくか。まずは生理を知ることから始めよう。
*経済産業省による2019年「健康経営における女性の健康の取り組みについて」より
Tanaka E, Momoeda M, Osuga Y et al. J Med Econ 2013; 16(11) 1255-1266
《DATA 1》
おさえておきたい生理の基礎知識
生理周期 平均28日
1回の期間 平均3~7日
1回の経血量 計60~100cc(正常範囲20〜140cc)
「生理周期」とは、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの期間。「経血」は、一度に出てくるのではなく、3日以上にわたって少しずつ出る。「経血量」は、多い日・少ない日があり、一般的に1日目と2日目が多く、徐々に少なくなっていく。
《DATA 2》
こんなに長い!一生涯から見た生理
一生涯で生理がくる回数 約494回
一生涯の生理期間 約6年9カ月(*)
初潮(最初の生理) 平均10~12歳
閉経(生理の停止) 平均50歳前後
*初潮から閉経までを40年間として、1回の生理を平均5日間、妊娠・授乳期間(生理がこない期間)を2年間とした場合
最初の生理がくる「初潮」は、おおよそ11歳前後。生理は、一定の周期(約28日)で訪れて、やがて「閉経」に向けて回数が減ってくる。妊娠・出産・授乳期間中には生理はこないため、一生涯に訪れる回数や期間には個人差がある。閉経は、生理がこない状態が12カ月続いたときに、振り返ってこなくなったタイミングを指す。
(DATA1、DATA2 「ユニ・チャーム ソフィ「みんなの生理研修」より)
《DATA 3》
知ってる?国が定める生理休暇
労働基準法 第68条「生理休暇」
“生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させることはできません”
生理休暇を請求した女性 0.9%
生理休暇を有給とする事業所 29.0%
生理休暇の請求者がいた事業所(*) 3.3%
*2019年4月1日〜2020年3月31日の間に生理休暇の請求をした女性がいた事業所の割合(厚生労働省による令和2年度 雇用均等基本調査「労働基準法に基づく母性保護制度の利用状況(生理休暇の請求)」より)調査対象数:6291事業所
生理によって就業が困難な場合、“就業させてはならない”と国が定めている法律。けれど、すべての企業や事業者が導入しているわけではない。また、導入していても、無給扱いとなるケースが多いようだ。生理であるという理由を表明して取得しなければならないことから、なかなか申し出がしにくいのも難点。
《DATA 4》
金銭的な負担も大きい 必要なものとコスト
【生理用品(利用経験率)】
使い捨てナプキン 97.8%
タンポン 57.9%
布ナプキン 12.3%
吸水型ショーツ 4.9%
(2021年9月シルミル研究所「ウーマンリサーチ」生理用品に関する調査[株式会社こどもりびんぐ調べ]より)回答者数:668人/複数回答
【使い捨てナプキン・タンポンにかかる一生涯のコスト】
必要な金額 平均33万6000円
*1回の生理に必要な生理用品の平均値700円×40年間として計算した場合/編集部調べ
利用経験率で見ると、もっとも多いのが使い捨てナプキン、続いてタンポン、布ナプキンとなる。使用している素材や形状、吸収率によって、価格にも幅がある。近年は、吸水素材を使用した吸水ショーツや、膣に挿入して経血を溜める月経カップなど、繰り返し使えるタイプの利用も広がっている。
【低用量ピル】
必要な金額(自費の場合) 平均3500円前後
*生理1周期あたり(診療代をのぞく)/編集部調べ
女性ホルモンが含まれている低用量ピルは、経口避妊薬としても知られているが、月経随伴症状の軽減や生理不順の改善に期待ができる薬でもある。月経困難症などの場合以外は、保険適用外となるケースが多い。婦人科での処方が必要だが、オンライン診察を組み合わせたサブスクリプションサービスも登場している。
【そのほか必要なもの】
・ 生理中に身につける下着
・ 体を温める衣類
・ 下着についた経血を洗う洗剤
・ 鎮痛剤(痛み止め)
・ 異常や不調があるときや低用量ピルの処方時の診療代
《DATA 5》
個人差が大きい生理痛
生理痛の対処法(とくによくとっている対処法)
1位 鎮痛薬を服用する 41.2%
2位 我慢する・過ぎ去るのを待つ 33.2%
3位 寝る・横になる 25.6%
4位 体を温める(とくに腰回り) 23.1%
生理痛によって失っていると思う時間
生理痛がひどい人 約5.7時間
生理痛がひどくない人 約2時間
女性全体 約4時間
生理痛に払っていいと思うお金(生理痛によって失われる時間をなくすために、1時間あたりに払ってもいいお金)
生理痛がひどい人 4522円
生理痛がひどくない人 664円
女性全体 2227円
生 理中に下腹部や腰に感じる痛みが「生理痛」。その対処として、4割の女性が鎮痛薬を飲んでいる現実がある。生理痛をなくすために払ってもいい金額の差を見ても、痛みの感じ方には大きな個人差があることがわかってくる。
(第一三共ヘルスケア「日本人の痛み意識調査」2011年より)