いま、多くの企業が、経営課題のひとつとして「多様性(Diversity)」の理解を推進している。性別や年齢、人種といった外見的な違いだけでなく、価値観や性格といった内面の違いまで受け入れていくこの視点は、働きやすい環境づくりだけでなく、企業の利益や、社会全体にもよい効果をもたらすと考えられている。ここでは、「多様性」をビジョンに掲げる2社の具体的な取り組みを見ていく。
“VUCA時代(*)”とも言われる昨今、時代に柔軟に対応し、新たなイノベーションを生み出すために、多様性を経営課題として重要視しているのが、情報通信企業「NTTデータ」。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を経営方針のひとつに掲げ、多様な人材の活躍と、誰もが仕事と家庭の両立ができる、働きやすい環境づくりを目指している。なかでもとくに重視しているのが、 新たな価値を創出し、より創造性を高めることを目標とした「女性の活躍推進」だ。これには、システム開発が主な業務となる同社ならではの“男性社員が多い”という環境要因に課題を感じているという。そのような背景から、左記の通り、2025年を目処に女性社員および女性の経営幹部や管理職を増やすための数値目標を設定。具体的には、仕事と育児の両立や、育児や介護休職から復帰した際のキャリア育成をサポートする研修など、継続的に安定して働くための各種研修を実施している。
「女性の活躍推進はもちろんですが、誰もが仕事と家庭の両立ができるように、たとえば男性の育休取得者を増やすことも目標にしています」
そう話すのは、人事本部の作田さん。昼休みの時間帯に開催している「ワーパパセミナー」では、育休中の過ごし方や育休の取得方法など、実際に育休をとった男性社員の体験談を紹介して、育休を取得しやすい環境づくりに努めているという。
男女がともに参加する育休中・育休前のキャリア形成支援セミナーでは、同じ部署の部長や課長クラスなどの先輩社員も参加。先輩社員の経験談が聞けたり、意見交換の場にもなっている。出産・育児は、性別を問わずとても大きなライフイベントだからこそ、仕事との両立についてさまざまな立場の社員が集まり考えることで、より働きやすい環境づくりを目指すというわけだ。
女性の活躍推進を中心に、多様な人材活躍を目指すNTTデータでは、経産省と東証が公表している「なでしこ銘柄」(女性の活躍推進企業)にも、2年連続で選定されている。これからの積極的な取り組みにも注目していきたい。
*Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字からなる言葉。社会の変化が激しく、将来の予測が困難であることを意味する

NTTデータ 人事本部
作田 明彦さん
NTTデータ
[女性活躍推進のための目標]
(2025年度末まで)
● 継続した女性採用比率 30%超
● 女性管理職比率 10%
● 女性経営幹部数(役員、組織長等) 15人以上
● 男性育児休職取得率 30%
NTTデータ
[社員数と管理職数の数値]
● 女性社員数
2010年度末 15.3%
(全社員 1万139名中、女性 1551名)
2020年度末 22.3%
(全社員 1万1955名中、女性 2662名)
● 女性管理職数
2010年度末 3.5%(67名)
2020年度末 7.2%(192名)
(NTTデータによる2011年度発行「CSR報告書」、2021年度発行「サステナビリティレポート」より)
CASE STUDY
D&Iの妨げになる
アンコンシャスバイアス(*)の解消
NTTデータ人事本部が分析を行ってきた結果、D&I推進の妨げとわかってきたのが「アンコンシャスバイアス*」だという。無意識な思い込みや、過去の経験則からの偏見といった思考パターンは、働く環境において多様性を否定する要因となっているようだ。よくある例として、子供がいる女性社員に対して、“こんなに多くの仕事を振ってはいけない”などと思い込んでいるケースがある。この思い込みによって、女性社員とのコミュニケーションに齟齬が生まれたり、円滑な業務進行を妨げる原因になることも。NTTデータでは、そうした対策として、今年度から管理職を対象に「アンコンシャスバイアス研修」を開始した。これは、働く環境における偏見などのパターン事例をあげて、意識的に偏見を払拭していくというもの。時短勤務をしている社員や、育休を取る男性社員に対して、モチベーションおよびキャリアアップへの意識の低さを感じるといった決めつけは、社内制度を利用している社員の評価を下げてしまうといったことにもなりかねない。リーダー的な立場の者が、より正しい多様性の認識を持てるよう、これからも実施を進めていくという。
*無意識に生まれる思い込みや偏見