新たな時間の過ごし方がこの世界で見つかる[超入門メタバース]

カルチャー

 国内最大規模のメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」で、ユーザーたちは、どんなふうに時間を過ごしているのだろうか?clusterの運営会社である、クラスター株式会社の成田暁彦さんに話を聞いた。


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Cluster Inc. COO
成田 暁彦さん

新卒で株式会社サイバーエージェントに入社し12年半在籍。ネット広告営業を経験後、2社の新規事業立ち上げを経験。その後、株式会社CyberZで広告部門の営業統括及び、企画マーケ部門、海外支社の責任者を兼務。2019年10月よりクラスター株式会社に参画し、ビジネス、アライアンス全般を管掌。2020年9月より取締役就任。

clusterの中にある
約1万のメタバース

 薄暗いバーには、グランドピアノが置かれていた。その向こうの窓の外には、大きな月が輝いている。反対側の壁際に目を向けると、ダーツボードが。ここで、ゲームもできるようだ。

 ここは、高千穂マサキさんというクリエイターがつくった「BAR月光」というバーチャル空間。clusterの中にある“ワールド”と呼ばれるメタバースのひとつだ。clusterには、現在約1万のワールドが存在し、その多くは、ユーザー自身の手によってつくられたものだという。成田さんが、そのバーカウンターで話を聞かせてくれた。

成田:clusterには、ゲームが楽しめる空間や、幻想的で美しい空間、実在する街を再現した空間などのワールドがあり、ユーザーたちはそこで、さまざまな時間の過ごし方をしています。ただ会話を楽しんでいるだけのユーザーもいれば、デートをしているカップルもいる。ラジオ体操をやっているワールドもあります(笑)。ほかにも渋谷の街を再現したワールド「バーチャル渋谷」では、昨年のハロウィンにイベントを開催しました。スクランブル交差点にステージをつくってCreepy Nutsのライブやアバターコンテストが行われ、街中を歩き回る宝探しゲームのようなことも。約半月の開催期間中に世界中から、のべ55万人がこのバーチャル渋谷に訪れました。

 clusterの特徴は、プラットフォームであるということです。つまり、ユーザーがつくりだすワールドが、clusterの中にどんどん増えていく。とくに目的なく訪れても、メタバースをホッピングしていけば、楽しい時間の過ごし方を見つけることができると思います。YouTubeで面白い動画を探していく体験に似ているかもしれませんね。

主役はユーザー自身。
個人が活躍できる仕組みも

 魅力的なコンテンツ(ワールド)をつくれば、そこに人が集まってくる。だからこそ、ワールドやアバターをつくりだすクリエイターが、メタバースでは重要な存在になってくると成田さんは言う。

成田:この人がつくったワールドがすごいと噂になれば、そのワールドに人が集まる。そうなるとクリエイターも、もっといいものをつくろうとする。その結果、clusterはどんどん人が集まる魅力的な場所になるし、YouTubeのように、clusterからも人気クリエイターが生まれてくるはずです。そして僕たちは、そんな状況を実現するためにも、きちんとクリエイターが対価を得られるようにしたい。近々、ユーザーが自分でつくったワールドのパーツや、アバターなどを販売できる機能が登場します。フリマみたいなワールドをつくって、クリエイターはそこに自分がつくったものを出品して、ほかのユーザーが買えるようにする。最近は、無料のツールで比較的簡単にアバターや3Dのパーツをつくれます。誰でも、クリエイターとしてお金を稼ぐことができる可能性があるんです。そうやって僕らは、メタバースの経済圏をつくっていきたいと考えています。

誰でも気軽に参加できる
敷居の低いメタバース

 clusterは“世界一敷居の低いメタバース”だと成田さんは言う。HMDがなくても、PCやスマホからアクセスできるし、ワールドの制作もスマホだけでできてしまう。しかも無料でだ。確かに敷居は低い。

成田:メタバースの魅力のひとつは、知らないユーザー同士が出会ったり、コミュニケーションをとれることですが、知らない人と話すことに不安がある方もいると思います。clusterって、おそらく日本一バーチャルイベントが多いメタバースなんです。毎日なにかしらのイベントが開催されています。たとえばトークショーのようなイベントもたくさんあるので、そういったワールドに行って話を聞くだけでもきっと楽しめると思います。そうして慣れてきたら、コミュニケーションにもぜひチャレンジしてみてください。またアバターも簡単につくれるようにしているので、まずは試しに自分が愛着を持てる姿になってメタバースを歩いてみてもらいたい。気づいたら、自分のワールドをつくって、クリエイターとして活躍している未来が待っているかもしれません。気軽にclusterに訪れてみてください。

 clusterは、あくまでも“箱”に過ぎない。その中に入る、ユーザーの想像力から生み出されたものにこそ、メタバースの可能性が秘められている。

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©KDDI・au 5G / 渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト

 「バーチャル渋谷」は、渋谷区公認のVR空間。駅前のスクランブル交差点から、公園通りの入り口あたりまで、リアルに再現された街並みが広がっている。このワールドには、いつでも訪れることができるが、ハロウィンなどのイベント開催時には街中が特別な装いに様変わり。clusterでは、プログラミングなどの専門知識がなくても、誰でも簡単に自分の想像したメタバース空間を創造できる「ワールドクラフト」という機能があり、テンプレートを自在に組み合わせることで、自分だけのメタバースを作成することができる。招待した人だけが入れるプライベートな空間にもできるし、誰でも入ってこられるよう公開する機能もある。

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cluster内にあるワールドの中で行われた取材

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成田さんのアバター

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© Cluster, Inc. All Rights Reserved.

clusterが定期的に開催しているイベント「Hello cluster」の集合写真

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 バーカウンターの中にたたずむ本。じつはこれは、4月に発売されたクラスター社のCEO加藤直人さんによる新刊『メタバース さよならアトムの時代』(集英社)をアバター化したもの。こんなふうに、自由な姿になれるのもメタバースならではの楽しみ方だ。ちなみに、clusterでは、5月29日(日)まで「アバターマーケット」を開催中。ユーザーがつくったアバターの展示即売会で、購入するとその場で着替えることができる。日替わりで6体のアバターが展示販売されるので、毎日通ってお気に入りのアバターを見つけてみよう。


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