渋沢栄一が邸宅を構え、日本初の銀行となった第一国立銀行や東京証券取引所などが設立されたことで、古くから金融経済の中心地として栄えた兜町エリア。いま、この街に新たな風が吹いている。ランドマークタワーが誕生し、北欧生まれのクラフトビールスタンドがオープン。渋沢ゆかりの日証館には新しくチョコレートとアイスのお店も。古きを見て、新しきを考える。進化を続ける、兜町の現在をご紹介。
「ティール」シェフパティシエ
眞砂翔平さん
1988年和歌山県生まれ。「ア・キャトル」を経て「クリオロ」にてスーシェフ、溜池山王「パスカル・ル・ガック」にてシェフパティシエを務める。「2017 Top of Patissier in Asia」でベストショコラティエを受賞。2021年11月に「ティール」をオープン。

「イーズ」シェフパティシエ
大山恵介さん
1986年、埼玉県生まれ。京橋「イデミスギノ」、浦和「アカシエ」などで経験を積み、渡仏。帰国後は新橋「レストランラフィネス」、千駄ヶ谷「レストランシンシア(ミシュラン一つ星)」などでシェフパティシエを務める。2020年7月に「イーズ」をオープン。

「ネキ」シェフ
西恭平さん
1983年京都生まれ。京都「グランヴィア」のレストラン部門で勤めたのち渡仏。帰国後は、京都のビストロなどを経て渋谷「ビストロ ロジウラ」シェフに。同店は2014年から6年連続ミシュランガイド東京のビブグルマンに掲載される。2020年7月に「ネキ」をオープン。
僕たちが感じる兜町の魅力
日曜日の朝10時40分。昨年11月にオープンしたチョコレートとアイスのお店「ティール」の入り口には、11時のオープンを待つ若い女性や家族連れがすでに並んでいた。茅場町駅の北側にある、かつて証券マンが闊歩した兜町エリアはいま、新たな姿へと変わりつつある。兜町に最近店を構えた人たちは、この街のどこに惹かれたのか。人気店の3人に話を聞いた。
「私は、再開発という言葉に、あまりいい印象がなかったんです」。そう話すのは、ビストロ「ネキ」のシェフ・西恭平さんだ。ここ数年、都内各所ではさまざまな再開発が行われ、商業施設がいくつも誕生している。兜町もそのひとつ。この街への出店の誘いがあったときも、最初は戸惑いがあったという。「けれど話を聞いていくうちに、兜町の再開発のテーマは”ネイバーフッド”なのかなと感じたんです。お店をやるならば、近隣の方が気軽に来られるような場所にしたいと思っていたところでした。兜町は自分と同じような考えで店づくりをしている人が多かったんです。馴染みのない街でしたが、ここで新しい店のかたちをつくることは、自分にとっていいチャレンジだと思いました」
「ネキ」のすぐ近くにあるパティスリー「イーズ」も、「ネキ」と同じ日にオープンした。パティシエの大山恵介さんは、店内にオープンキッチンを設けた意図をこう語る。「つくり手の顔が見えれば安心して商品を買えるだろうし、私たちも、ケーキを見て喜ぶお客さんの表情を見ることができるので、もっと美味しいものをつくろうと思える。街のケーキ屋さんとして、よりよい食体験を届けていきたいと思っています」。
冒頭で触れた「ティール」のシェフパティシエ・眞砂翔平さんは、大山さんからの誘いもあって、この街で自分のお店を持つことを決めたという。彼が目指すのは、誰でも気軽に、パティシエがつくるスイーツを味わえるアイス屋さんとチョコレート屋さん。店内に並ぶスイーツは、チョコレートのほかにもドーナツやマドレーヌなど、多くの人に親しみのあるものばかりだ。「ティールは、この街がすでに盛り上がりを見せていた時期にオープンしたお店です。だからこそ、僕たちが兜町にさらに貢献していけるよう、さまざまなアプローチができるお菓子をつくっていきたい。地元の方から観光客まで、たくさんの人が集まる魅力あふれる店と街になっていけばいいなと思います」。
兜町には、この3店以外にも新しい店が続々と誕生し、訪れる人を迎えてくれる。生まれ変わった街を楽しく散策してみよう。

「ティール」の人気フレーバー「アマゾンカカオ」と「あまおう&柚子」のジェラート。チョコレートフレーバーはもちろん、季節によって変わる旬の果実を使ったフレーバーもおすすめ。ジェラート(ダブル)750円

「ティール」の店内。窓側の席で兜町の街並みを眺めながらゆっくりくつろげる。

「ネキ」の店内。大きな窓から光が降り注ぐ開放的な店内で、お昼からお酒とランチコースをいただけば、至福のひとときを味わえるはず。

季節の食材を使った目にも美しいケーキが並ぶ「イーズ」のショーケース。
本格派、だけど街に寄り添う菓子
眞砂さんと大山さんがタッグを組み誕生した「イーズ」の姉妹店。高品質なアマゾンカカオを使用したチョコレート菓子や、上からオリーブオイルをかけて提供するアイスなどが人気。溜池山王のショコラティエでシェフパティシエを務めていた眞砂さんと、さまざまなレストランでの調理経験をもつ大山さんのアイデアが光る品ばかり。
TEAL
中央区日本橋兜町1-10 日証館 1F
Tel. 03-6661-7568
[営]11:00〜18:00
[休]水
https://tealtokyo.stores.jp
食体験ごと持ち帰れるケーキ
わさびをアクセントに加えた苺のショートケーキや、付属のソースをかけて食べるモンブランなど、「レストランで提供されるデザートのライブ感や驚きを再現したい」という大山さんの思いが込められたユニークなケーキが並ぶ「イーズ」。焼き菓子やパンも充実していて、毎日のおやつにも、大切なお祝いごとにもぴったりなものを選べる。

EASE
中央区日本橋兜町9-1
Tel. 03-6231-1681
[営]11:00〜18:00
[休]水
instagram:@ease_tokyo
日常の中の特別を味わう
シェフの西さんの出身地である関西地方で使われている、「近く」や「そば」を意味する言葉から名づけられた「Neki」。フレンチの技法に和の食材をかけ合わせた料理は、繊細かつ親しみのある味わい。ランチ、ディナーともに、アラカルトでもコースでも楽しむことができる。西さんがセレクトしたワインとともに、カジュアルにフレンチを楽しんで。

NEKI
中央区日本橋兜町8-1
Tel. 03-6231-1988
[営]11:30〜14:30(L.O.14:00)、18:00〜21:00(L.O.20:00)
[休]日
instagram:@neki_tokyo

