国宝の金堂。中に鎮座する仏像もすべて国宝に指定されている。南大門をくぐってすぐのこの景色は、奈良を象徴する美観の一つに数えられる。

緑あふれるお寺でなごむ[奈良ならではの15のこと]


3.緑あふれるお寺でなごむ

律宗総本山 唐招提寺

教科書で見た鑑真和上が創建した寺院
 鑑真和上像を、教科書で見たことがある人も多いだろう。鑑真大和上(688〜763年)は、さまざまな困難を経て、視力を失いながらも来日を果たした唐の大師。唐招提寺は、鑑真大和上が天武天皇の子、新田部親王の旧宅地に移り住み、修行道場を開いたことに始まる私寺(朝廷などの主導による官寺ではなく、民間によって建てられた寺院)だ。そのためか、南大門をくぐって境内に入ると、不思議と親密でやさしい空気が漂っているのが感じられる。正面に見えるのが、奈良時代建立の寺院金堂としては唯一現存する国宝の金堂。シックな色合いが渋い、とつい思ってしまうが、建立当初は柱が朱色で、壁にも彩色がほどこされていたという。往時の華やかな様子を想像しながら参拝するのも楽しみのひとつだ。堂内に安置された御本尊の盧舎那仏坐像、そして千手観音菩薩立像、薬師如来立像、四天王像、梵天・帝釈天立像も、すべて国宝。ちなみに、唐招提寺では建造物5件、仏像を含めたその他12件、合計17件もの国宝を見ることができる。

 境内は緑がいっぱいで、全体が大きな庭のよう。とくに最奥にある鑑真和上御廟への参道は、一面に広がる苔に木漏れ日が落ちる様子が息を呑む美しさだ。   

 開山堂で拝観できる鑑真和上像は、2013年につくられた「御身代わり像」。国宝の鑑真和上坐像は御影堂に安置され、6月に数日のみ公開される。薬師寺とは徒歩10〜15分の距離にあるので、たっぷり時間を取って両方参拝するのがおすすめだ。

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年間数日のみ公開される国宝、鑑真和上坐像に代わり、開山堂に鎮座する鑑真和上像の御身代わり像。

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鑑真和上御廟への参道。地面に広がる苔は、落ち葉が丁寧に掃き清められていてきれい。


TOSHODAIJI

奈良県奈良市五条町13-46
近鉄西ノ京駅徒歩約8分、JR奈良駅六条山行バス約17分
「唐招提寺」下車すぐ
Tel. 0742-33-7900
[開]8:30〜17:00(受付は16:30まで)
[休]無休
拝観料:大人1000円
https://toshodaiji.jp


世界遺産登録25周年を祝して、
奈良が誇る文化財を巡ろう

 「古都奈良の文化財」の世界遺産登録25周年を記念し、今秋から来年春にかけてさまざまなイベントが開催される。なかでも目玉は、史上初の「六社寺共通拝観券」が発売されたこと。東大寺大仏殿、興福寺国宝館、春日大社御本殿特別参拝、元興寺通常拝観、薬師寺白鳳伽藍と玄奘三蔵院伽藍(1月15日まで)、唐招提寺通常拝観を巡ることができる。1冊5000円で、2024年3月31日まで有効。散華などの拝観御礼品を受けることができるほか、共通拝観券購入者のみの特典として、期間限定特別御朱印(御朱印料が別途必要)もいただける。また、11月の毎週金・土には、夜間特別参拝や境内ライトアップなどが行われる予定。詳しくはhttps://kotonara25.jpへ。

世界遺産25周年記念事業についてのお問い合わせは、0742-30-0230(奈良市観光協会まで)

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上段:東大寺 大仏殿、春日大社 万燈籠イメージ、興福寺 中金堂
下段:元興寺 極楽堂(本堂)、唐招提寺 金堂、薬師寺 玄奘塔 ※全てイメージです
写真提供:奈良市観光協会

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