selection&text: 稲葉智美

《音楽日々帖》温故知新な音楽


 テン年代も平成も今年で終わり。時代の変わり目に聴きたい温故知新なアルバムをご紹介します。

 ソレイユは「女子中学生がレコード屋さんで見つけた名盤を歌ってみた!」という感じの新感覚バンドです。オリジナル曲ながら、ロネッツ? 大瀧詠一? 聖子ちゃん!? と聴けば聴くほど名曲が頭をよぎるオマージュ具合。実は邦楽シーンを支える豪華作家陣が楽曲を提供しているんです。1曲目の「太陽がいっぱい」は、冒頭のカウントからベースラインまでビートルズの「Taxman」そっくり。ビートルズ好きの私は顔がニヤけました。

 70年代シンガーソングライターの重鎮ジェームス・テイラーを参照したというのは、2018年に結成した日本のバンド、オールド・デイズ・テイラー。音の輪郭まで丁寧に紡がれたサウンドに耳を奪われます。こんなに心地よい時間が流れる音楽は久しぶりでした。季節とともに移ろう心。歌詞にも微細な感覚が光ります。

 映画の公開でクイーンのリバイバルに沸いたこの冬、レモン・ツイッグスの『Go to School』をお聴き逃しなく。まさに、オペラに傾倒していたクイーンの音絵巻を思わせる大作です。人間の親に育てられたチンパンジー“シェイン”の成長譚は、曲ごとにシーンが展開する全16幕のミュージカル仕立てで描かれます。音楽が目まぐるしく消費される時代に、若き兄弟から独創的なコンセプトアルバムが届いたことがうれしい。「ロックは芸術だ!」と(フレディー・マーキュリーのあのポーズで)拳を突き上げたくなる名盤です。

SOLEIL『SOLEIL is Alright』

 中学3年生のそれいゆと、サリー久保田( ザ・ファントムギフト/les5-4-3-2-1)、中森泰弘(ヒックスヴィル/ましまろ)によるバンド。全編モノラル録音で横山剣らが楽曲を提供

metro193_music_01.jpgビクターエンタテインメント 2018

OLD DAYS TAILOR『Old Days Tailor』

 スタジオguzuriのオーナーでシンガーソングライターの笹倉慎介、細野晴臣や星野源などのサポートを手がける伊賀航、シンガーの優河、元・森は生きているの岡田拓郎らによるバンド

metro193_music_02.jpgP-VINE 2018

LEMON TWIGS『Go to School 』

 両親の影響による圧倒的なクラシック・ロックの教養と、懐古主義に留まらないハイブリッドな才能をもつダダリオ兄弟によるユニット。トッド・ラングレン参加のセカンドアルバム

metro193_music_03.jpgBEAT RECORDS 2018






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