ここではない どこかへ《音楽日々帖》


 夏休みを指折り数えている方もいらっしゃるでしょう。というわけで、バケーションシーズンの7月は、聴けば一瞬で別世界へトリップできる音楽3選です。

 ベイルートの紡ぐ音楽はいつも、聴く人の心を彼方へと連れて行きます。そもそもバンド名からして異国情緒を漂わせている彼らですが、最新作はイタリアのブーツの踵にあたるプーリア州の奥田舎で制作。中世の城塞都市ガッリーポリで見た光景からインスピレーションを得て曲が出来上がったのだそう。そんな体験が反映されてか、逃避行感のある作品に仕上がりました。ブラスが神々しく響き、浮世離れした桃源郷へと誘われます。

 テキサス出身なのに、一瞬にして東南アジアの蒸し暑さを醸し出すクルアンビン。2作目はアイコンであるレトロなタイファンク・サウンドに中東音楽の妖艶さを練りこんで、それはもう濃厚です。フジロックに出演する彼ら。苗場の気温と湿度をジリジリ上げながら観客をトリップさせること間違いなしです。

 そしてイズラエル・カマカヴィヴォオレの「虹の彼方に~この素晴らしき世界」のメドレー。誰もが知るこの2曲をマッシュアップすることを思いついたのは天才としか言いようがありません! 実は彼、『Facing Future』(未来と直面する)というアルバムを発表した4年後、38歳の若さで惜しくもこの世を去りました。夏が来ると必ず手に取る一枚で、大男のイズが小さなウクレレを爪弾く姿を想像するたびにキュンとするのです。

BEIRUT『Gallipoli』

 米ニューメキシコ州サンタフェ出身のシンガーソングライター、ザック・コンドン率いる大所帯バンド。アルバム制作を行った南イタリアの地名をタイトルに据えた4作目

metro199-music-01.jpg4AD 2019

KHRUANGBIN『Con Todo El Mundo 』

 テキサス出身。1960~70年代のタイ音楽や東南アジアのポップ・ミュージックに影響を受けたメロウでエキゾチックなソウル~ファンク・サウンドを奏でる3ピースバンドの2作目

metro199-music-02.jpgNight Time Stories 2018

ISRAEL KAMAKAWIWO‘OLE『Facing Future』

 340kgを超える巨体から発せられる美声が特徴のハワイのレジェンド。1970年代後半からウクレレ奏者として活動。曙、武蔵丸、小錦の3力士の名前を歌詞に取り入れた曲も有名

metro199-music-03.jpg輸入盤1993






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