美術にコラージュという技法がありますが、アヴァランチーズに出合って、それが音楽でも成り立つことを知りました。元ネタの文脈を断ち切り、まったく新しい世界観を構築できるものなのだと。なぜアヴァランチーズの話かというと、今年に入って心踊る2枚の“再構築”アルバムがリリースされたからです。
ひとつは、ビデオテープミュージックの『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』。古いVHSからほとんど偶然にサルベージされた音楽のかけらたちは、元の姿が判別できないほど作品に溶け込んでいるのに、ブラウン管時代の手触りを生々しく伝えてきます。アジア4カ国から客演を迎えて多言語のボーカルが飛び交う本作は、夜市の妖艶さや宵闇に灯るネオンが脳裏に浮かび、アジアの路地裏を彷徨っているような気分に。そこで、はたと立ち返るのは、ここ日本もまた、西洋から見たエキゾチック・アジアの一部なのだという視点です。細野晴臣に熱い視線を送る海外のミュージシャンやファンは、こんな感覚なのかしらと想像しながら。
もうひとつは、その細野晴臣の『Hochono House』です。1970年代の米軍ハウスの匂いを伝える名盤が、46年ぶりの改築工事を終え、いま住まうための家に!若者のカントリーライフっぽい内容だった「僕は一寸」は、モチーフはそのままに歌詞がリライトされ、70代を迎えた自身の今の歌へと転生していました。スクラップ・アンド・ビルドが加速する東京の街を眺めながら、魔法のような音楽のリノベーションに胸を熱くしております。
THE AVALANCHES『Wildfl ower』
オーストラリアのサンプリング集団。カリプソと東欧音楽を合体させた「Frankie Sinatra」やクッキーモンスターも登場する「The Noisy Eater」など極彩色のミックスアルバム
VIDEOTAPEMUSIC『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』
リサイクルショップや閉店したレンタルショップで収集したVHSや、ホームビデオなどをサンプリングし映像と音楽を制作。日本・韓国・台湾・フィリピンのボーカリストを迎えた4作目
カクバリズム2019
細野晴臣『Hochono Hous』
デビュー50周年を記念し1973年のソロデビューアルバムを自らの手により新構築。曲順をひっくり返し、眠っていた音源を使い、歌詞も一部リライトされた実験的な1枚