10月は、“秋アルバム”をご紹介します。
まずはボン・イヴェールの『i , i』。「冬」「春」「夏」に位置付けられた過去の3作品に続く今作、ついに季節が一巡。多様なコラボレーターに門戸を開くことで、豊かな化学反応が起こせることを証明した壮観な1枚です。もともと孤独と向き合うことから始まり、自己から他者へという流れが、テーマにもプロセスにも一貫していたボン・イヴェール。仲間と迎える実りの秋に、胸が熱くなります。
2017年の「The Bus Song」を聴いて放課後の教室がフラッシュバックしたくらい、ジェイ・ソムの音楽には西日が似合うと思っていたら、『Anak Ko』がまさかの夕日ジャケでした!そんな個人的な驚きはさておき…胸を締め付けるジェイ・ソムの音楽の魅力、それはアウトロにあります。1分強のアウトロに窓越しの夜景が思い浮かぶ「Nighttime Drive」や、曲の半分を占めるアウトロがボーカルよりもエモーショナルな「Crown」など、西日っぽさを感じさせる秘密はそこにあるのかも。
そしてニック・ドレイクの『Five Leaves Left』。“残り5枚の葉” とはタバコの巻紙のことらしいのですが、葉が5枚だけ散らずに枝にしがみついた落葉樹のイメージが、本作からわずか5年で早逝した作者と重なり、永遠の秋アルバムだと思っています。心模様をうかがうことはできても、語りかけられている感じはしなくて、ニック・ドレイクの横顔を眺めているようなポエティックな作品。美しいガットギターの調べは、晩秋の澄んだ空気にぴったりです。
BON IVER『i, i』
アメリカのバンド。近年注力するコミュニティ・ミュージックの活動が結実した、秋色で、瞑想に耽った、深く沁み入る4作目。ブルース・ホーンズビー、ジェイムス・ブレイクら参加

JAY SOM『Anak Ko』
フィリピン系アメリカ人、メリーナ・ドゥテルテのソロプロジェクト。ベッドルーム発・90年代オルタナの白昼夢サウンド。タイトルはタガログ語で「私の子供/我が子」の意味

NICK DRAKE『Five Leaves Left 』
26歳で早逝したイギリス人フォークシンガーのデビュー作。ベース、ピアノ、ときにチェロを加えアコースティックギターの繊細な弾き語りを聞かせる。2019年はアルバムリリース50周年
