午前2時過ぎ、ヘッドライトをともして霧に包まれた暗い登山道を20分ほど進むと、木立が開けた場所に出た。すでに6、7人のカメラマンが三脚を据え“その時”を待っていた。
冷え込みが一層増すと、視界を覆っていた霧が徐々に高度を下げ、雲海に。「見えてきた!」。居並ぶ人たちの中から声が上がった。月光と街明かりに照らされた雲海の合間に城が浮かぶ。日の出の頃には、200人近くのカメラマンが周囲に集まっていた。
「越前大野城」(福井県大野市)は天正8(1580)年ごろに完成した後、安永4(1775)年に焼失。現在の天守は昭和43(1968)年に再建された。
“天空の城”として知られるようになったきっかけは、地元のアマチュアカメラマン、佐々木修さん(68)が4年前に撮った写真だった。