illustration: Yu Fukagawa

《お多福美人講座》美人になる化粧・ならない化粧

コラム

 新橋の"売れっ妓(こ)芸者"だった千代里が、美人への道をご案内。
今日も一日、ささやかな心がけが美をつくり、福を招きます。

 芸者が、美しくなる以外に化粧をすることがあるのをご存知でしょうか。舞踊の『釣女』では、上臈(じょうろう)という美人役と醜女(しこめ)役があるのですが、そのときはうんとおかしみのある顔を作ります。また、2月の節分では、「お化け」といっていろんな仮装をしてお座敷を回るのですが、その時々の流行りや、その名の通り化け物、宝塚、など、普段の白塗りとは違う化粧をします。

 「醜女役メイク」のポイントは眉と頬。濃く太い海苔のような下がり眉を顔に貼り付け、ほっぺを日の丸のように真っ赤にくっきり塗る。これだけでもう、もとがどんなに美人でも、その跡形もなくなります。「手っ取り早く、濃いポイントメイクをする」。これがおかしい顔への最短距離です。よく「今日はノーメイクなんで顔を見せられません」というセリフを聞きますが、方向性を間違った主張しすぎる化粧に比べれば、化粧をしていないほうがずっとマシということもあるのです。

 一方、「美人役メイク」はすぐには仕上がりません。些細なことの積み重ねがものをいうのです。求められるのは線描の確かさやぼかしの腕。そう、それはまるで日本画。眉やアイラインがガタガタだったり不自然だと美人にはなりません。チークもシャドウも、はっきり入れすぎたり位置を間違えると「醜女役メイク」に。

 「なめらかで、顔のパーツが正しい位置に配置されていて、顔色がいい」

 この一見あたりまえのことが美人に見えるための必須条件なのです。梅沢富美男さんは、まさにその生き証人!!眉やアイラインは、とくに集中力を発揮して臨むこと。シャドウやチークのグラデーションは美しく描くこと。また、肌を整えたり唇がプルンと潤うように始終バームなどを塗る、という普段の心がけも大切です。美は一日にしてならず。わずかな違いが大きな美しさの違いを生むのです。


ちより

エッセイスト。元新橋芸者。子どもの頃から美人にその秘訣を聞くのが好き。それを言葉にして周りに伝えることに喜びを感じている。著書に『捨てれば入る福ふくそうじ』『福ふく恋の兵法』など



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