絵のなかの人物に、想像をめぐらす楽しさ
17世紀のオランダを代表する画家、ヨハネス・フェルメール。わずか35点ともいわれる現存作品のうち、日本では過去最多となる9点が東京に展示されることで話題の『フェルメール展』が、上野の森美術館で開催中だ。本展のナビゲーターに選ばれたのは、女優の石原さとみ。国内のみならず、海外を旅した時には、必ず美術館に足を運ぶというアート好きの彼女にとって、フェルメールの魅力は「そばに置いておきたくなる “親しみやすさ”」だという。
「フェルメールの作品には、当時の上流階級に向けた高尚な芸術ではなく、一般の人たちにも身近な、日常に光が当てられたものが多くあります。しかも単なる風景や情景として描くのではなく、あくまでも人物にスポットを当てながら描く作風がとても好きです。絵のなかの女性はどんな人物なんだろう? どんな生活を送っていたんだろう? と、いろんな想像を膨らませることができる。いつまでも飽きることがないですよね」
そんなふうに一つひとつの作品に対して想いをめぐらすことは、鑑賞の醍醐味でもあるそう。本展では、普段からよく利用するという音声ガイドにも初挑戦する。
「客観的な立場を保ちつつ、作品への想像をかき立たせていく、という姿勢を大切にしたいと思ってます。作品を見ながら自由に想像をめぐらせることができる、一つの手がかりになれたらうれしいです」
ときには、知識だけでなく感情に従って見たり、隅々まで観察したりすることで見えてくる世界もあると、彼女は続ける。
「歴史や背景を知ることで、より作品の世界を楽しめるのはもちろんですが、この人の表情は素敵だな、どんな感情なんだろう? 作者とはどんな関係だったんだろう? と、いろんな疑問を投げかけながら作品を見ることも、私にとってはすごく豊かな体験です。作品の見方に正解はないので、自由に楽しんでもらえたらいいですね」
いしはら さとみ
1986年12月24日、東京都生まれ。
2003年、映画『わたしのグランパ』にて女優デビュー。同作で『第27回 日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。以後、数々の映画やドラマ、舞台などで幅広く活躍中
≪牛乳を注ぐ女≫ 1658-1660年頃 アムステルダム国立美術館
Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908 RUKS MUSEUM
『フェルメール展』
東京・上野の森美術館にて2019年2月3日(日)まで開催 *日時指定入場制メトロポリターナ臨時増刊号(10月15日発行)にも、石原さとみさんの特別インタビューを掲載。お楽しみに!