「どこかで見たような景色、シチュエーション」「懐かしさを感じる雰囲気」―スペイン出身の画家アントニ・タウレの作品を観(み)て最初に抱いた感情です。
描かれた場所に実際に足を運んだことはないけれど、なぜか記憶の引き出しを探りたくなる。彼の作品をじっくりと鑑賞すると、次第に作品の世界に入り込むような錯覚に陥ります。それはまるで夢の1コマを見ているような不思議な感覚を呼び起こす、今までにない美術体験です。
そんな魅惑的な作品を描き続ける画家の日本初の展覧会が1月16日(水)から、銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催されます。
バルセロナで建築家資格を取得した後、絵画、写真、舞台装飾の制作をスタート。世界中の美術館やギャラリーで数々の個展、グループ展を開いてきた彼が、今回取り組んだテーマは「光の島」です。1970年代から拠点の一つとしているスペインのフォルメンテーラ島を描いています。
地中海西部、イビサ島のすぐそばに位置するこの島は、豊かな自然と絶景によって多くの人々を魅了する楽園として、画家のインスピレーションの源となっています。光の島は愛する現実の島であると同時に、もう一つの現実とも言うべき夢や幻想の空間を描いています。
Quatre collonnes,2017 © Antoni Taulé
Mnémosyne,2012 ©Antoni Taulé
Pour un oui ou pour un non,1985 © Antoni Taulé
今回の展示作品は大きく2つに分かれます。一つは近年の絵画作品、もう一つは写真の上に絵を描いた作品です。この作品は過去の断片としての写真が、彩色して再構成することで現在に蘇り、独自の世界観を創り出しています。
写真の上に絵を描いた作品 Carrelage,1999 © Antoni Taulé
また、タウレ作品の特徴として目を引くのが、さまざまな建物の内部から外に向けられた画角。差し込む光が照らす室内の空間は、何かが起こった後、あるいは、これから何かが起こるかのような意味深長な雰囲気をまとっています。
作品を見ていると、この場所でどんなストーリーが展開されているのだろう? と、画家の目線になって想像してしまいます。頭の中で架空のストーリーを描きながら鑑賞するのも面白いかもしれません。
会場を訪れ、実際に旅するように「光の島」の光景を楽しんでみてください。その独特なオーラに包まれる不思議な感覚が、あなたをイメージの世界の旅に連れ出してくれることでしょう。
アントニ・タウレ「INSULA LUX 光の島」
会期:1月16日~2月14日(木) 12:00〜19:30
会場:シャネル・ネクサス・ホール(中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階)
TEL 03-3779-4001